総務省の施策後も料金格差はあまり縮まらず

昨年10月から11月にかけて、総務省は「SIMロック解除義務化」「端末の実質0円販売の事実上禁止」など、これまで打ち出してきた施策の成果と動向を振り返るべく、ICT安心・安全研究会が実施した「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を実施した。その中で「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」が設けられ、接続料の見直しに関する議論も同時に進められていたのだ。

総務省は昨年開催した「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」で、接続料の差を縮めるための見直しを進めていた

見直しの理由は、接続料が最も安いNTTドコモと、最も高いソフトバンクとの間に1.5倍もの差があったため。価格差が大きいことから、MVNOが借りる回線の大半が、接続料の最も安いNTTドコモに集中してしまっていることを、総務省はかねてより問題視していたのだ。

そこで同ワーキングチームでは、算定式に用いる「適正な利潤」を算出するために用いる、「β」という値の求め方にばらつきがあったのを統一化し、さらにβの値にも大きな差が付かないよう制限を設けるよう取り決めがなされた。その新しい算定式が今回適用されたことにより、最も高かったソフトバンクの接続料が大きく下がったわけだ。

とはいうものの、NTTドコモとソフトバンクの接続料の差は依然として1.4倍あり、あまり差が縮まったという印象はない。加えてNTTドコモとKDDIの料金差を見ても、元々算定式に用いる値がある程度統一されていたこともあって、差は従来とほとんど変わっていない状況だ。

確かに最近では、日本通信がソフトバンクのMVNOとなり、安価なデータ通信サービスを提供するなどの取り組みが進められている。だが接続料の差が影響してか、NTTドコモのMVNOのサービスと比べ料金が高めなことから、ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhone/iPadで利用できるという以外のメリットを見出しにくい。

それゆえ今回ソフトバンクの接続料が大きく下がったといっても、同社のネットワークを借りるMVNOが増えるとは考えにくい。大半のMVNOがNTTドコモの回線を利用するという傾向は、当面変わることがなさそうだ。