コスト圧力が強いIoT向け通信で高収益を得る環境を作り上げられるか

IoT向けに同時接続数を増やす上では、NB-IoTのような無線通信部分の技術だけでなく、携帯電話のネットワーク全体を制御する、コアネットワークに関しても新技術の導入も検討されている。その一例となるのが、サービスによって求められる要求条件に応じて、ネットワークを仮想的に分割して用いる「ネットワークスライシング」という技術だ。

例を挙げて説明すると、従来はスマートフォン向けの高速・大容量通信と、IoT向けの低速・多接続通信を1つのネットワークで処理していたが、ネットワークスライシングによってそれを仮想的に分離した別々のネットワークで処理する。これによってスマートフォンとIoT、それぞれに適したネットワークのカスタマイズが可能になり、より効率よく快適な通信が実現できるようになるわけだ。

コアネットワーク側には「ネットワークスライシング」という技術を導入し、IoT向けの通信を分離して、IoTに適したカスタマイズを施すことも検討されている

こうした技術の導入によって、5GではIoTの利用に適した同時接続数を実現しようとしているが、コンシューマー向けのIoT機器はまだそれほど多く出回っているわけではないことから、その利活用は法人向けが主体になってくると考えられる。特にシンプルな情報を送信するメーターやセンサー系デバイスなどには、5Gの通信モジュール導入が急速に進む可能性がありそうだ。

だが実際に普及が進む上では、ビジネス面でいくつかの課題あるようにも感じる。中でも大きいのは、IoT向け通信モジュールの価格や、通信サービスの料金設計など、料金に関する課題だ。というのもIoTでは非常に多くの機器で通信を利用することから、導入・運用コストが従来よりはるかに安い価格でないと利用は広まらないため、導入する企業側からのコスト圧力が強くなると考えられる。

一方でモジュールを提供する企業や、通信事業者としては、コストが安いと利益が出しにくく、利用するデバイスが増えても収益面でのメリットがあまり得られない。それだけに、5GでIoTの利活用を進める上では、通信環境やモジュールの整備に加え、付加価値となるデバイスやサービスなどで売上を高められる仕組みを構築するなど、IoTでいかに高い収益を上げるかという、仕組み作りも求められることになりそうだ。

IoT機器向け通信には低コストが求められる傾向が強い。実際、NB-IoT向けの通信モジュールは1つ当たり5ドル程度のコストが要求されているという