次世代のモバイル通信方式「5G」で、従来と異なる進化を見せているのが、1つの基地局に同時接続するデバイスを大幅に増やすことだ。IoTの広まりを受けて求められるようになった5Gの同時接続数だが、5Gではこれをどのような方法で実現しようとしているのだろうか。また5Gの通信をIoTのビジネスに結び付ける上で、課題はどのような点にあるだろうか。

IoT時代を迎え、5Gでは100倍の同時接続数を実現

携帯電話に用いられるモバイル通信の進化を振り返ると、第1世代(1G)から第2世代(2G)までは音声通話の品質向上、第3世代(3G)から第4世代(4G)まではデータ通信の高速・大容量化が大きなテーマとなっていた。だが第5世代となる「5G」では、4Gまでの高速・大容量だけでなく、新たな進化の方向性も求められている。

それが「同時接続数」だ。同時接続数とは、要するに1つの携帯電話基地局に対し、いくつのデバイスを同時に接続できるかということ。これまでの進化では同時接続性を求められることはなかったのだが、5Gではこの同時接続数を、LTEの100倍以上になることを目指すとしている。

なぜ、5Gでそれだけの同時接続数を実現する必要があるのかといえば、それはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の広まりにある。あらゆる機器がインターネットに接続することで新しい価値が生み出されるとして、大きな注目を集めているIoTだが、当然のことながら、インターネットに接続するためには何らかのネットワークが必要になる。

現在、IoT向けのネットワークとしてはWi-Fiのほか、通常の携帯電話網が用いられていることが多い。だがWi-Fiでは利用できるエリアが限られることから、日本や欧州などでは携帯電話網や、そこから派生した通信規格がIoT向けネットワークの利用の中心になると考えられているのだ。

しかしながら現在の携帯電話網は、あくまで携帯電話やスマートフォンで利用することを想定しているため、多数のデバイスを同時に接続する設計とはなっておらず、IoT機器が急増した場合は対応に限界がある。それゆえ5Gではあらかじめ、IoTで携帯電話ネットワークが多く利用されることを想定し、LTEの100倍以上の同時接続数を実現するという仕様設計がなされているのだ。

ソフトバンクによると、LTEの基地局当たり同時デバイス接続数は1000程度で、10万基地局でも同時に1億デバイスしか接続できないとのこと。1兆接続を超えるIoT時代には対応できないという