マクロ撮影でも手前から奥までピント

付加機能の面では、カメラ側の機能である「深度合成モード」と「フォーカスブラケット」に対応している点に注目したい。

深度合成モードとは、自動的にピント位置を少しずつずらしながら8枚の写真を撮影し、それをカメラ内合成することで、手前から奥までにピントが合った1枚の写真として仕上げるモードだ。オリンパスの「OM-D E-M1」と「OM-D E-M1 Mark II」の2台が備える機能であり、対応レンズは今のところ7製品。その1つが本レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」である。

マクロ撮影は、通常の撮影に比べると被写界深度が極端に浅く、たとえ絞りを絞り込んでも、被写体の前後がぼけて写る。狙いとしてのボケなら問題はないが、被写体をくっきりと再現したいときには不向き。そんなマクロ撮影の悩みを解消するのが深度合成モードである。

下の写真は、車のオモチャを並べて撮ったもの。車1台の全長は約7cm。ピントを合わせた手前の車からレンズまでの距離は約20cmだ。絞りをF11まで絞ったが、それでも後ろの車はぼけている。

通常撮影。絞り優先AE(F11 1/3秒) ISO200 WB:晴天 前頁と同様に、すべての作例撮影に使用したカメラは「OM-D E-M1 Mark II」

「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」の絞りはF22まであるので、さらに絞り込むことは可能だ。しかし、F22でも後ろの車は被写界深度内には入らないし、回折の影響が強くなってシャープ感は低下してしまう。こんなときこそ深度合成モードが役立つ。下は、絞りなどの設定は変えずに、深度合成モードで撮影した写真だ。

深度合成モード。絞り優先AE F11 1/3秒 ISO200 WB:晴天

車3台ともくっきりと写すことができた。深度合成モードはこうした静物撮影のほか、植物や昆虫の細部までをシャープに表現したいときに役立つ機能だ。ただし、画角がやや狭くなる点には注意したい。

また、被写体の大きさや撮影距離によっては、8枚の合成だけでは十分な深度が得られないこともある。そんなときは深度合成はオフにして、フォーカスブラケットで撮るといい。フォーカスブラケットは、自動的にピント位置をずらしながら最大999枚まで撮影できる機能。そして、Adobe Photoshopなどの画像編集ソフトを使うことで深度合成が行える。

下の写真は、より接近したため、8枚の深度合成モードでは満足いくピントが得られなかった。そこで、フォーカスブラケットを使って30枚撮影し、それをPhotoshopで合成してみた。

通常撮影。絞り優先AE F8 1/10秒 ISO200 WB:晴天

フォーカスブラケットで撮影した30枚をPhotoshopで合成。絞り優先AE F8 1/10秒 ISO200 WB:晴天

最後は、直径約1cmのハンコを最短距離付近で撮ったもの。フォーカスブラケットで撮影した50枚をPhotoshopで合成したところ、全面をくっきりと再現できた。

通常撮影。マニュアル露出 F8 1/1.6秒 ISO200 WB:オート

フォーカスブラケットで撮影した50枚をPhotoshopで合成。マニュアル露出 F8 1/1.6秒 ISO200 WB:オート

以上のように、水滴から生き物、静物まで幅広くマクロ撮影を楽しむことができた。「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」は、比較的低価格ながら、撮影領域の広いマクロレンズといっていい。標準ズームだけでは飽き足らなくなってきた人にもおすすめできる。