2月25日、Apple銀座にてトークイベント『テクノロジーを活用してマラソンに挑戦しよう』が開催された。Appleのフィットネス・ヘルステクノロジー担当ディレクター ジェイ・ブラニック氏をモデレータに、ランニングクラブAFE TOKYOのメンバーが、日々のランニングやデバイスの活用法などについてのトークが行われた。

AFEからは、Markさん、DKJさん、Emiriさん、LONOさん、Kensukeさん、NORIさんの6名が登壇

Apple フィットネス・ヘルステクノロジー担当ディレクター ジェイ・ブラニック氏

AFE(Athletic Far East)の名前は、ナイキの生みの親であるビル・バウワーマンが1977年に設立した伝説的な陸上競技クラブ「Athletic West」にインスパイアされてつけられたもの。

DKJさん「最初は一人で走っていたのですが、そのうちトレーニング仲間ができ、チームを立ち上げることになりました。ストリートを走ることで自分たちのチームをプロモーションする、というコンセプトで始めました」

この日の朝にはブラニック氏も参加してのシェイクアップランを開催。Instagramのタグ「#bridgethegap」でつながった海外からのランナーの姿も。

テクノロジーが走るモチベーションになる

イベントではブラニック氏からAFEのメンバーに様々な質問が投げかけられた。まずは、ここ10年ほどで切り離せない関係になってきたスポーツとテクノロジーについて。AFEではInstagramで活動をシェアしているが、個人ではどのようにテクノロジーを活用しているのだろうか。Markさんは本格的に走り始めた2007年11月から「Nike+iPod」を使っていたと答えた。

Markさん「Nike+が毎日の走るモチベーションになってくれました。今では走る時にGPSを使っていない人の方が少ないのでは。この5、6年でかなり状況が変わったのではないかと思います」

ブラニック氏は「若い人はご存じないかもしれませんが」と前置きして、昨年で発売から10周年を迎えたNike+iPodに触れた。当時のNike+は靴にモーションセンサーを取り付け、iPodと連携させてログを取る仕組みだった。それから10年、スポーツに関わるデバイスの状況は大きく変化している。

ブラニック氏「(昨年発売された)Apple Watch Nike+モデルが10周年を迎える頃には、世の中はどうなっているんでしょうね」

この他、ログを取ることで練習の内容とレースのパフォーマンスの関係を確認でき、効率的な練習に役立てられるという声や、ランだけでなくNIKE+ TRAINING CLUBアプリも自宅でのトレーニングに役立てているという声が上がった。

Emiriさん「ログが自分の自信にもつながるし、他の人がいいねしてくれると励みにもなります。ライフスタイルの中に、スポーツとテクノロジーが根付いていますね」

レースでパフォーマンスを発揮するには、トレーニングはもちろんだが食べ物も重要な要素だ。ブラニック氏はAFEのメンバーに、調子をキープし、実力を発揮するために食べているものを訊ねた。

もともと野菜好きでベジタリアン生活をしていたこともあるというNORIさんは、「サンシャインジュース」というジュースバーでコールドプレスジュースを販売している。ジュースにすることで効率的に野菜や果物の栄養を摂取できるのが利点だという。

NORI「練習をハードに積んだ時、人それぞれ食べたいものは違うと思いますが、自分のコンディションに合ったものを知って、継続して摂ることでパフォーマンスが上がってくるのではないかと思います」

逆に、完走後に食べるラーメンやステーキを目標に走っているという声もあり、食との付き合い方はメンバーそれぞれだ。また、レース直前に食べるものとして挙がったのがカステラ。すぐにエネルギーになる糖質を摂れて、消化に負担がかからず、食べても身体が重くならないという。

トレーニング中に聴く音楽や、ケガを防ぐコツといった話題も

また、ブラニック氏が走ることの目標について訊ねると、Kensuke氏は「5歳の子供がいるので、子供が成長して長距離を走れるようになった時、いっしょに走れる体力を作っておきたい」と答えた。Emiriさんは、友達と一緒に汗を流すことで「急激に心の距離が縮まる」ことを体験し、「いろんな大会にいろんな友達と参加して、一緒にゴールを迎える」ことを掲げて走っているという。

DKJさんは「スノーボードと野球が大好き。それをずっと続けていくためにも走り続けたい」とクロストレーニングの効果と楽しさを挙げた。以前ニューヨークに住んでいたLONO氏は、2014年にニューヨークシティマラソンに参加し、その盛り上がりを味わったことで様々な街を巡ることがひとつの目標になっているそうだ。

LONO氏「街を眺めながら走るのはランニングならではの楽しさ。走ることを通じて仲間もでき、昨年は韓国やバリにも走りに行きました。その両方があることがいいと思っています」

サブ3ランナーがアドバイス、長距離を走るコツ

翌日に東京マラソン2017の開催を控え、このイベント会場にも数名の出走予定ランナーが来場していた。今回の登壇者からもNORIさんとEmiriさんが出走する予定だ。ブラニック氏が長距離を走るためのアドバイスを訊ねると、NORIさんは「まずは楽しんで走ること、そして自分の状況を把握すること」だと答えた。

NORIさん「東京マラソンは盛り上がるので、ハイになって突っ込んでしまいがちです。それで良い結果が出ればいいのですが、泣く思いをするケースが多いと思うので、そこに注意して、35キロを超えるまではある程度セーブし、いけると思ったらそこから上げて、笑顔でフィニッシュするのが最高だと思います」

ちなみに、Emiriさんの目標タイムはサブ4(4時間切り)。NORIさんは2時間30分と、市民ランナーの夢であるサブ3を軽く超えた高い目標を掲げ、会場からの声援を受けた。

最後に、AFEのメンバーとブラニック氏が来場者からの質問に答えた。トレーニングでApple Watchを使う利点についての質問では「iPhoneへのデータ蓄積が簡単」「女性にも使いやすいサイズ」「ワイヤレスのイヤホンで音楽も聴ける」といった意見が聞かれた。さらに「シャワーを浴びた後、ブルッと震えて(中に入った)水を出すのがかわいい」「(Apple Payで)お財布代わりに飲み物も買える」などSiries 2で追加された機能も好評のようだ。

また、ランニングの楽しみ方について訊ねられると、「Instagramを通じて励まし合うことがモチベーションに」「ウェアを変えると格好から自信が生まれることも」「体組成計で測定し、体年齢が若くなると嬉しい」といった回答が。質問者自身も40歳を過ぎてから走り始め、3キロ、5キロと走れるようになるにつれ、気持ちも前向きになれたと語っていた。

テクノロジーはランナーにとって効率や利便性という機能を超え、モチベーションを提供したり、仲間と楽しむためのツールにもなっている。健康維持や身体を鍛えるといった目標だけでなく、ランを楽しむことが自己実現や自己表現にもつながっていくことが伝わるイベントとなった。