「いまのやり方をやめる」2つの事例
「例えば、太陽電池事業は、国内市場にフォーカスしてきたが、この市場だけでは生きてはいけない。選択肢は、固定費を下げながら、国内にフォーカスして、じり貧を覚悟してやっていくのか、あるいは成長性のある海外に新たな投資をしてでも活路を見いだすのかの2つ。そのなかで、我々が出した結論は、米テスラモーターズ(以下、テスラ)との協業という選択だった。止めずに、投資をして、もっと伸ばす選択をした」とする。
第3四半期累計連結業績でも、太陽電池事業を含むエコソリューションズは、前年同期比4%減の1兆1187億円、営業利益は22%減の461億円。そのうち、太陽電池が主力となるエナジーシステム事業部の売上高は前年同期比14%減の2366億円と2桁の減少となっている。
その太陽電池事業については、2016年12月28日に、テスラとの協業を発表。米ニューヨーク州バッファローにあるテスラのバッファロー工場において、太陽電池セルとモジュールの生産を開始することに合意し、太陽電池モジュールの生産を2017年夏に開始。2019年までに1GWの生産能力に拡大する計画を明らかにした。テスラはパナソニックから、同工場で生産された太陽電池を長期間にわたり購入することになる。この協業は、休止中だった大阪府貝塚市の二色の浜工場の再稼働にもつながる可能性が高い。
「本当に事業を止めるとなると、撤退コストがかかるものもある。そうしたことを含めて、もう一歩踏み込んで考えた選択肢」だと津賀社長は説明する。
そして、パナホームの選択も同じ判断からのものだという。
パナソニックは、2016年12月20日に、2017年8月1日付けで、パナホームを完全子会社化すると発表した。
これについて、津賀社長は、「これまでのようにパナソニックが54%を出資した状況でもやってはいけた。だが、国内の住宅着工件数が減少するなど、市場縮小するなかで、いままでのやり方では限界があると判断した。100%子会社化することで、より大胆な挑戦ができるようになると判断した結果、選択と集中を進めた」と語る。
パナソニックとパナホームの間には、一部製品において競合関係があったものの、販売ルートの違いから、統合した形で新たな製品を作るといったところまでは踏み込めない状況にあった。完全子会社化することで、こうした部分にも踏み込んでいくことができるようになる。そうした取り組みを含めて、ワンパナソニックとしての事業展開を推進することで、強みを発揮していこうというわけだ。
そして、「意思を込めた減益計画」を裏付けるもうひとつの要素が、高成長事業における先行投資だ。
二次電池事業への先行投資
河井代表取締役専務は、「大規模6事業部のうち、インフォテインメント、二次電池、 パナホームは、将来成長に向けた先行投資のフェーズにある」と説明するが、とくに、テスラとの協業が本格的にスタートした二次電池は、その最たるものだろう。
テスラとの協業について、先にも、太陽電池事業での協業に触れたが、二次電池事業での協業はその比ではない。テスラが米ネバダ州に建設したギガファクトリーでは、円筒形リチウムイオン電池セルの量産を開始。ギガファクトリー内に設置されたパナソニックの電池セル工場で、テスラの新型EV(電気自動車)である「モデル 3」、およびテスラの蓄電システム向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産。また、テスラではパナソニックが生産した電池セルを使用した電池モジュールを生産することになる。