2016年末、パナソニックの津賀一宏社長は、1年を振り返り、2018年度の売上高10兆円の目標を、2016年3月に撤回したこと、そして、2016年度の見通しを下方修正したことに触れ、「あまり思い出したくない1年」と語っていたが、今回、上方修正をしたとはいっても、それを挽回したとは言い難いものだ。
為替影響が理由ということに加えて、上方修正した通期見通しを見ても、売上高、調整後営業利益、当期純利益は、いずれも前年実績を下回る水準である。
津賀社長は、2016年度の見通し数字については、「意思を込めた減益計画であり、将来に向けた投資を行なう1年」と表現。「2017年度の増収増益の実現、2018年度以降の増収増益の定着に向けて、足場固めと成長事業への仕込みを行なう」と語る。つまり、2016年度は、数字よりも、中身を重視する1年であることを強調してみせる。
減収基調から脱却のために
「意思を込めた減益計画」への取り組みを裏付けるように、パナソニックの津賀社長は、2017年1月に、社員に対するメッセージのなかで、2017年を「選択と集中を進める年」と位置づけ、そのなかで「やめる勇気を持つこと」に触れた。
2017年1月に、米ラスベガスで開催されたCES 2017の会場でインタビューに応じた津賀社長は、「私が、2012年に社長に就任してから数年間は、赤字事業をやめる、あるいは減らしていくという方針を打ち出し、そのなかで営業利益率5%を各事業部の指針とした。その後、成長戦略を進めるなかで、高成長事業、安定成長事業、収益改善事業に切り分け、高成長事業においては、先行的な投資が必要な場合には、単年ベースでは営業利益率5%を割ることもあるが、成長を優先させるなど、事業に対する見方を変えてきた」としながら、「だが、2016年度上期までは、為替影響を除いても減収基調が止まらない状況にあった。これは、縮小する事業、とくにマーケットが縮小する事業を多くやっていることの裏返しでもあり、我々は、もっと成長する事業にリソースを集中していく必要があると判断した。その気持ちをより明確にするために、あえて2017年初めに、『選択と集中』という言い方をし、『やめる勇気』という言葉を使った」と説明した。
ただ、津賀社長に話を聞くと、これは単に「事業をやめる」ということを指すのではないことがわかる。むしろ、「いまのやり方をやめる」という方が適切なのかもしれない。
津賀社長は、ひとつの例を挙げながら、「やめる勇気」の意味を示してみせた。