ソニーの平井一夫社長兼CEOは、米ラスベガスで開催したCES 2017において、日本のプレス関係者を対象に取材に応じ、「2017年度は総括の年になる。2017年度の営業利益5,000億円といった目標に対して結果を出していきたい」などと語った。ソニーがCES 2017で発表した有機ELテレビ「BRAVIA A1E」に関しては、「SONYの名前をつけても、胸を張れる商品ができた」としつつも、「すべてを有機ELにシフトするということではない」とコメント。
―― 今回のCES 2017をどう感じたか。
平井氏「ソニーは今回のCES 2017において、HDRに焦点を当てた。コンシューマ機器からプロフェッショナル向け機器、コンテンツを含めて、HDRの体験を推進している。CES 2017では、有機ELパネルを含めた4K HDRテレビや、迫力の音を再現するサウンドバーなどを発表した。
今回のCES 2017では、AIが注目されていると感じている。数年前はスマホであり、その後、ウェアラブルになり、今年はAIになった。注目される領域の変化のスピードが加速している。だがこれは、スマホやウェアラブルはもう誰もやっていないという話ではなく、スマホにもウェアラブルにもAIが入り、いわば積み重なっている状況になってきた。
ソニーは、昨年(2016年)はオーディオに力を入れたが、今年は原点回帰として、映像のこだわりを前面に出して、有機ELテレビを発表した。CESでは、ソニーとして、どういうことをアピールしたいかということをブレずにやってきた。それがソニーらしさにつながっている」
■CES 2017、超盛りだくさんのソニーブース - 有機ELテレビにUHD BDプレーヤー、ホームシアターに完全無線イヤホンまで ■ソニーの有機ELテレビは、なぜスピーカーなしで音が出る? - その秘密をCES 2017現地で開発者に聞く |
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―― ソニーは、有機ELテレビをどう位置づけているのか。
平井氏「ソニーはこれまで液晶テレビを中心にやってきたが、今回、有機ELテレビを新たに追加した。これをBRAVIA OLEDと呼ぶように、BRAVIAのひとつのバリエーションに位置づけた。だが、これからすべてのテレビを有機ELにシフトするということではない。
BRAVIAのうち、有機ELテレビが5割を占めるような比重にはならない。お客様により幅広い映像体験の選択肢を提供するものであり、有機ELの長所をわかっていただけるお客様に買ってもらいたい。この時期に有機ELテレビを発表したのには理由がある。以前は有機ELのパネルを自ら製造していたが、今回は、自分たちでパネルを製造するわけではない。だからこそ、これまで以上に、ソニーらしい画質を追求することにこだわった。
4K HDR対応プロセッサである「X1 Extreme」を完成させたことで、液晶テレビだけでなく、有機ELテレビでも、ソニーが追求している画質を得られることが確認できた。そこで、この時期に投入することを決定した。液晶の画質を通じて、『ソニー=高画質』というイメージを作ってきたが、有機ELテレビは、液晶テレビとは違う味が出るBRAVIAのバリエーションのひとつに位置づける。
いまや複数のメーカーから有機ELテレビが登場しており、有機ELであることが特徴にはならない。一方で、どんな画質を追求しているのか、どんなユニークさを持っているのか、どんなデザインなのか、ということが問われる市場になってきた。ソニーが発表した有機ELテレビ「BRAVIA A1E」は、たたずまいにもこだわり、世界で初めて、画面から音が出る機構を採用した。また、画質も徹底的に追求した。BRAVIAのブランドに恥じない、「SONY」の名前をつけて胸を張れる商品ができた。自信を持って展開していきたい」
―― CES 2017では、新たなLife Space UXを提案した。今後、家庭内で映像の楽しみ方は変わっていくのか。
平井氏「Life Space UXは、2014年から事業を展開しており、生活空間を活用して、音や映像のエンターテインメントコンテンツを楽しむ新たなコンセプトである。今回のCES 2017では、そのコンセプトを実現する新4Kプロジェクターを展示した。テレビはテレビとして大きなビジネスであり、黒字化した現在はさらに積極的にやっていきたい。
テレビは家庭のなかでも認知されている商品だが、テレビ以外にも、映像を楽しめる商品があるだろうと考えて、4Kの超短焦点プロジェクターやポータブルブロジェクターを提案してきた。これからもテレビではない楽しみ方を追求したい。
ただこれは、テレビを否定するものではない。テレビだけではない映像の楽しみ方も表現することがソニーの役割だと考えている。また、Life Space UXは、単に商品を提供するというだけでなく、設置についてもパートナーと一緒になってしっかりと提案することを重視している」