CES 2017開幕前日となる1月4日、CESのオープニングキーノートにNVIDIAのジェンスン・ファンCEOが登壇し、深層学習やAIに対する取り組みと、それを利用した新製品やサービス、オートモーティブ向け技術などを披露した。
NVIDIAは、この1年、ゲーミングに加え、VR/AR/MR、データセンター、そして自動運転を柱に事業を展開。とくにAIや深層学習分野では投資家の評価も高く、この1年でその株価が3倍になるなど、IT業界以外からの注目も高まっている。
2016年10月に同社が開催したGPU Technology Conference Japan 2016で、フアン氏が「AIはもはやSFではない」と表現したように、かつてはSFの世界と思われていたAI(人工知能)も、GPUの演算能力の飛躍的向上と深層学習ライブラリの充実などを受けて、身近なものになりつつある。
フアン氏は、GoogleのAlpha Goによる囲碁名人との対決や、迷路の中をさまよいつつモンスターを倒していくFPSゲームDOOMも人工知能が迷路の解析をしながら最短でクリアできるようになったと指摘。
また、モネやゴッホなどの画家のペインティングパターンを写真に適用し絵画を作ったり、音声合成・加工、ロボット制御、そして自動運転と、もはやわれわれの身近な存在になっているという。
NVIDIAにとって、GeForceシリーズは最大の収益源であり、全世界で2億ものユーザーを持つゲーミングプラットフォームだ。そのゲーム市場は、ここ数年で最大のエンターテイメント市場として注目されるとともに、ゲームを競い合うeSPORTSは、視聴者数という面でプロスポーツイベントを上回ることすらある成長産業になっている。
NVIDIAはこうしたゲーム配信プラットフォームのサポートにも積極的で、6億人ものゲームコンテンツ視聴者を持つTwitchへ自分のプレイを配信できる機能などを、GeForce ExperienceというカタチでGeForceユーザーに提供。そして、その裾野をFacebook Liveにも広げるとアナウンスした。
また、フアン氏は「世界中には20億台のPCがあるが、そのうちの半分の10億台が、ゲームを満足に楽しめない」と、現在市場にあるPCのゲーム対応状況を説明する。
そこで、CPU内蔵グラフィックスなど、十分なグラフィックス性能を持たないPCでも、最新のゲームタイトルをストリーミングで楽しめるようにする「GeForce Now」を、GeForceを利用していないPCユーザーにも提供を開始すると宣言。これまでは同社のゲームコンソール「SHIELD」でのみ、展開してきたが、これによりさらなるユーザーの拡大を目指す。
薄型ノートPCだけでなく、iMacでもSteamの最新ゲームタイトルをプレイできるというライブデモを披露。3月より早期アクセスサービスを開始する計画だ。なお、そのサービス料金は20時間で25ドルとなる。
SHIELDは、ホームAIに
さらに、フアン氏はNVIDIAが米国市場においてAndroid TVクライアントとして展開中のSHIELDの次世代製品投入をアナウンス、NETFLIXやAmazon、YouTubeのプレミアムコンテンツ配信に対応する世界初の4K/HDR対応コンソールとなるとアピールした。
また、SHIELDにGoogle Assistant for TVの機能を持たせることで、テレビを音声で操作するだけでなく、情報検索や家電の制御などもできるようにする。そのために、Google Assistant for TV用のコンパニオンデバイスとなるノイズキャンセリング機能搭載ネットワークマイクの「NVIDIA SPORT」を発表した。
室内に複数のSPOTを接地することで、リビングルーム以外でも、GoogleのAI対応スマートホーム機能を活用できるようにする。NVDIAは、この新SHIELDを米国市場では同日予約を開始し、1月末の出荷を予定。価格は199ドルとなる。また、SPOTは49.99ドルで年内に市場投入される見通しだ。
自動車産業において影響力を増すNVIDIA
10兆円市場となる自動車産業において、NVIDIAは欠かせない存在となりつつある。同社は、2016年9月に次世代Tegraと次世代GPU"Volta"を統合した新SoCをベースとした車載用AIスーパーコンピュータ「Xavier」(エクサヴィア)を発表している。
今回のオープニングキーノートでは、Xavierの活用事例として同社がテスト用に開発した自動運転車両のBB8による自動運転のビデオを披露したほか、Xavierの演算能力を活かして、AIコ・パイロットとして、危険要因の察知や車輌間隔の自動調整などに収まらず、ドライバーの状態を監視して、眠そうにしていたり、注意力散漫になっていた場合は警告を発することもできるようにする。また、Xavierの性能をもってすれば、唇の動きを読み取って、命令処理を行なうこともできるようになると言う。
NVIDIAは、DrivePXやXavierを利用したAI自動車のプラットフォームとして、DriveWorks APIを提供しているが、自動運転に必要とされる地図データなどは、中国のBaiduやヨーロッパのTom Tomと協力し、MapWorks APIとして整備を進めている。
このMapWorksの協力企業に、ゼンリンも参画したことを発表。また、手快適な大手自動車部品メーカーのZFやボッシュもNVIDIAの技術を採用したAIコンピュータを開発・販売する計画であることを明かした。さらに、アウディと提携し、次世代AIカーを開発、2020年までにNVIDIAのAIコンピュータを搭載した自動運転車を投入するとアナウンスした。