鴻海傘下に入って進む自主再建策の見直し
だが、戴社長は、こうしたライセンスビジネスを見直し、自らの力で、全世界におけるシャープブランドによる製品ビジネスを展開することを視野に入れている。世界最大のEMS(電子機器受託製造)である鴻海の力を活用できるいまは、当時のシャープの状況とは置かれた立場が異なるのは明らかだ。
「シャープの物流に鴻海精密工業の仕組みを利用した結果、白物家電とテレビだけで、半年間で20億円のコスト削減ができた」(シャープ・戴社長)ということからも、シャープブランドを海外で展開する効果はありそうだ。
実は、見直しを図ろうとしているのは、ライセンスビジネスだけではない。シャープが自主再建のために行ってきたいくつもの取り組みについても、戴社長は見直そうとしている。
実際、本社エリアにある田辺ビルは、NTT都市開発に一度売却したものの、これを買い戻すことに成功している。このほかにも、ニトリに売却した本社ビルを買い戻すための話し合いを行うなどの動きをみせている。
戴社長は、「今までシャープが結んできた契約は不平等なものが多い。契約は尊重するが、私は社長としてそれを再交渉し、見直していく」と発言。具体的なものとして、太陽光発電事業で使用しているシリコンの調達や、オフィスの10年間の長期契約などを指摘。そのなかで、シャープのブランドライセンスビジネスもその対象であることに言及してみせた。
「鴻海の力を利用して、解約を行ったり、見直しをしていく」と、戴社長は意気込む。
世界最大のEMS(電子機器受託製造)という立場は、世界的に通用するものだといえる。その立場にある鴻海が、影響力を活用して、シャープが結んできた契約を見直すというわけだ。
今後、ただ、ライセンスビジネスを展開しているハイセンス、Vestelに対しても交渉を続けていくことになるだろう。
ホンハイにとってブランドビジネスとは
シャープが、ブランドを買い戻すという「荒技」に打って出るのは、鴻海にとって、ブランドビジネスが、シャープ買収における重要な柱のひとつになっているからだ。
鴻海は、部品などにおいてフォックスコンというブランドを展開しているが、これは一般ユーザー向けのブランドではない。さらに子会社を通じてスマホブランドのインフォーカスなどのブランドも持つが、これらのブランドビジネスは決して成功してはいない。