同社の取り組みは、こうした製品が不良かどうかを判定するだけではない。近年は、独自のサービスとして、良品の半導体デバイス(主にLSI)に対するプロセス診断といったものも手がける。これは、良品に対して、潜在的な問題があるのかどうかを調べるサービスで、内在する欠陥や不具合構造を検出し、将来起こりうる不具合を防ぐことを可能とするもの。10種類56項目にわたる評価項目をもとに、BGAのボイドやワイヤボンディングのワイヤ流れ、ストレスによるクラック、チップの各層解析によるビアコンタクトの接続異常などを調べ上げる。現在、25nmプロセス程度まではすべての検査項目を適用することが可能だが、それ以下の微細プロセスになると、TEM(透過型電子顕微鏡)による観察が主体になるという。もともとは、人工衛星に用いられる半導体などの調査からスタートしたサービスで、小惑星探査衛星「はやぶさ2」の部品評価なども行ったほか、現在では自動車などの事故が起こってはいけない分野での活用も進んでいるという。

LSIプロセス診断の概要。細かな評価がなされ、それによりどの程度の不良リスクが内在するのか、といったことが分かるようになっている

「車載用の電子機器や電子部品が故障した際には、徹底した故障解析が要求されるが、近年はウェハ製造時の汚染などが原因となることも増えてきており、チップレベルから実装基板のレベルまで、トータルに故障を特定する必要がでてきている。OEGでは、さまざまなツールと組み合わせた解析システムを提案することで、再現性の高さなどにもよるが、かなり短時間での解析を実現するなど、実績を挙げてきている。こうした意識は、民生品にも広がりを見せてきており、単に部品を交換すればよい、という製品であっても、原因を特定する必要性を企業側も感じ始めつつある」と同社では、評価・解析ニーズの広がりを説明するほか、「最近は、劣化調査、つまり現場で数年ほど使われた製品が、どの程度生き残っており、交換時期がどの程度先なのか、ということを知りたい、というニーズも強まってきた」とのことで、さらなる評価・解析ニーズが生み出されていることを強調する。

OEG本社に設置されている各種の評価・解析装置。FIB(フォーカスドイオンビーム装置)や走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)といった半導体解析ではおなじみの装置のほかに、マイクロフォーカスX線装置やX線CT装置、超音波映像装置、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、レーザーパッケージ開封装置、イオン付着型質量分析装置(IA-MS)といったさまざまなミクロな世界を解析するための装置がところ狭しと置かれ、日々、作業が行われている

また、「OEGはあらゆる評価・解析ニーズに対応していく。決して、我々は顧客からの相談を断らないし、顧客が要求する問題の解決に向けて、それを可能にする技術も開発する」というように、顧客のニーズに絶対に応え、電子機器に対する問題解決の手助けをする、という誇り高き決意を掲げ、試験屋でも解析屋でもなく、それがなぜ、どうすれば解決できるのか、という答えまでも提供する唯一無二の企業でありたいという。「故障解析などは、悪いところが見つからないと、逆に悪かったような印象があるが、それは結果として良品解析につながり、そこからもっと異なる不良の原因が見えてくることもある。原因が分からなくても、故障の要因が分かれば、メカニズムが見えてきて、原因の絞込みができていく。我々はそうした細かなことまで可能とする技術力を武器に、顧客が実現したい高い品質に向けたサポートを行う」というように、あくまで単に解析や評価だけを行う企業ではないことを同社は何度も強調していた。今後も複雑化が進む電子技術。故障と解析はまさに、完全犯罪を狙う頭脳犯を追いかける警察や小説に登場するような探偵のごとく知恵比べの様相を呈している。そんなどこかの誰かが抱えるエレクトロニクスの困った課題を、今日もOEGは持てる技術をフルに発揮し、解決していくことだろう。