2016年10月13日(米国時間)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14946を、ファーストリングを選択したPCとモバイル向けにリリースした。高精度タッチパッドのUX改善や無線LANの一時的無効化、モバイル版では文字入力に関するUX改善が加わっている。

OSビルド14942で発生していたUWPアプリの問題は修正済み

先週リリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド14942は、プロセスの管理方法を変更したためか、Xbox Liveへサインインできないという問題が発生していた。公式ブログでは、前回の記事を寄稿した後に、「サービスホストを分離した結果として、Xbox Liveへサインインできなくなる問題が発生している」と追記され、レジストリエントリーの修正方法を紹介していたが、OSビルド14946で修正等々を行わずに動作を確認したところ、問題は改善していた。また、筆者の環境ではUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションの多くが正しく描画されない問題も発生。ビデオドライバーの問題かと他のPCでも確認したが結果は同じため、本ビルドまで待ったところ、こちらの問題も改善していた。

OSビルド14942ではUWPアプリケーションが正しく動作しなかった。画面は「Minecraft: Windows 10 Edition(Beta)」だが、「Facebookメッセンジャー」などの異常描画も確認している

OSビルド14946では無事改善。これでブロックと戯れる日々が帰ってきた。もちろんXboxへのサインインも復活している

さて、OSビルド14946の改善点だが、Microsoft WDG(Windows and Devices Group) ソフトウェアエンジニアのDona Sarkar氏は、高精度タッチパッドのカスタマイズ機能改善を筆頭に掲げている。「我々は先週(のOSビルド14942で)、高精度タッチパッドのUX改善に取り組んでいることを発表したが、(OSビルド14946では)さらに一歩先に進んだ」(Sarkar氏)という。

「Other gestures(その他のジェスチャー)」セクションで、3本指もしくは4本指によるジェスチャー動作として、Cortana検索/アクションセンターの起動/再生と一時停止/マウスの中央ボタン/カスタムなどが選択可能。<カスタム>を選択した場合、何らかのアクションが実行できると思われるが、現時点ではそこまでの機能を実装していない。OSビルド14942が動作する高精度タッチパッドを備えたPCが手元にないため、その差異を確認できないが、Sarkar氏の発言からはこれらジェスチャー機能のカスタマイズ機能を指しているのだろう。

3/4本指によるタップやスワイプ操作よるジェスチャー操作のアクションカスタマイズが行える

さらにパワーユーザー向けに、<Advanced gesture configuration>を用意している。ただし、同項目はOSビルド14942でも用意されていた。設定項目は基本的に同じだが、より具体的なカスタマイズを行うため、3/4本指によるタップや上下左右へのスワイプ時のアクションを個別に選択できる。筆者は各寄稿記事で述べているように、タッチパッドによる操作は苦手としてきたが、最近はようやく2本指によるスクロールが使えるようになり、4本指で左右にスワイプすることで仮想デスクトップを切り替える機能は2-in-1 PCで多用しているところだ。これらのジェスチャー操作が利用者によって好みのアクションに置き換えられるのは、使い勝手を向上させる大きなポイントとなるだろう。なお、Sarkar氏は本ビルドではタッチパッドのスクロールが敏感だった問題を修正し、今後実装する予定の「custom keyboard shortcut」が加わったと説明しているが、筆者の環境では確認できなかった。

より詳細設定が可能な「Advanced gesture configuration」

Continuum for Phoneにも変更が加わっている。Windows 10 Mobileデバイスのバッテリー節約とディスプレイへの焼き付きを防止するため、Windows 10 Mobileデバイスのディスプレイが消える仕組みが加わった。これらの設定は<ロック画面>の<接続されている場合の外部画面のタイムアウト>で設定し、「30秒/1/3/5//15/30分/タイムアウト」をドロップダウンリストから選択できる。

Continuum for Phone使用時に有効になる<接続されている場合の外部画面のタイムアウト>

無線LAN周りでは<ネットワークとインターネット/Wi-Fi>に、無線LAN接続を一時的に無効(無線LANデバイスの電源をオフ)にし、指定時間後に復活させる機能が加わった。ドロップダウンリストからは「手動/1時間/4時間/1日」を選択できると説明されているが、筆者の環境では設定項目が現れないため動作は確認していない。Surface Pro 4でもUSBアダプターを取り付けたデスクトップPCでも設定項目が現れないため、下図は公式ブログの画像を引用したが、Sarkar氏の説明によれば、<Wi-Fi(Legacy)>から<Wi-Fi>への機能移行を進めており、Windows 10 Mobileにも同様の仕組みが加わるようだ。

無線LANデバイスを一定時間無効にする<Turn Wi-Fi back on>(公式ブログより抜粋)

モバイル版となるWindows 10 Mobile Insider Previewには、言語周りの改善も加わっている。Sarkar氏の説明では、OSは利用者の語彙を学習し、使い続けることでスマートになっていくとSarkar氏は説明しているが、これらの機能を切り替える設定項目は見つけることはできなかった。また、説明にある"オートコレクト"は使用頻度の高い文字を自動修正する機能のため、あくまでも英単語入力時の改善と思われる。さらにユーザー辞書から学習した単語を削除する機能も加わった。PC版と異なり、設定項目を用意していないが、入力時に「-{削除する学習単語}」とすることで削除できるという。ちなみにWindows 10 Mobileには、以前から自動バックアップ機能が備わっているが、本ビルドからバックアップ頻度を週に1回に変更している。Sarkar氏はその理由や以前のバックアップ頻度について言及していないが、従来と同じく手動バックアップはいつでも実行可能だ。

英語キーボードのオプション設定。オートコレクトに類する設定項目が並んでいる。ただし、設定項目の内容はバージョン1607と同じだ

ここからはPC版とモバイル版の修正内容と既知の問題を紹介する。まずはPC版の修正箇所から。

  • Hyper-VおよびBash(Windows Subsystem for Linux)などのオプションは本ビルド更新後、インストールされたままにする必要がある。
  • Xbox Liveを使用するゲームでサインインできない問題を修正した。
  • Microsoft Edgeのアドレスバーに文字を入力する際や新たなタブを開く際などにクラッシュする問題を修正した。
  • Microsoft Edgeなどのアプリケーションでタッチスクロールが敏感になる問題を修正した。
  • MOV形式ファイルを開くとExplorer.exeがハングアップする問題を修正した。
  • インターネット接続が有効な状態でも、通知領域のネットワークアイコンに赤い「×」が加わる問題を修正した。
  • アクションセンターなどから設定するディスプレイの明るさが正しく自動調整されるように修正した。
  • 「ナレーター」が<すべてのアプリ>やタイルを正しく読み上げない問題を修正した。
  • <プログラムから開く>ダイアログに2つの「電卓」がエントリーされてしまう問題を修正した。

次はモバイル版の修正箇所を紹介する。

  • テキストメッセージの送信に失敗する問題を修正した。
  • Windows 10 MobileデバイスをPCに接続して写真などを取り込む際、エクスプローラーの動作を改善し、処理を高速化させた。
  • 「ナレーター」による読み上げ順番が正しく動作するように修正した。
  • WhatsAppによる動画サムネイル(縮小画面)が正しく描画されなかった問題を修正した。
  • 「カメラ」でビデオ録画を行う際、一部で音声が欠落していた問題を修正した。

次はPC版で確認された既知の問題を紹介する。

  • サードパーティ製セキュリティ対策ソフト(BitdefenderやKaspersky Antivirus、F-Secure Antivirus、Malwarebytesなど)がインストールされている場合、本ビルドはインストールできない。
  • ReCoreやGears of War 4、Forza Horizon 3、Killer Instinct、Rise of the Tomb RaiderなどWindowsストア経由で購入する大型タイトルが起動に失敗する。

筆者の環境でも「Forza Motorsport 6: Apex」を起動してみたが、タイトルロゴの描画を終えたタイミングでハングアップした。なお、「Minecraft: Windows 10 Edition(Beta)」はプレイできることを確認している。最後にモバイル版の既知の問題を紹介しよう。

  • 音声合成パックのインストールを試みると、本ビルドでは0x80188319エラーが発生し、失敗してしまう。Microsoftは次のビルドで0x80188319エラーの問題を修正すると述べている。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第69回) - コントロールパネルが消えた? OSビルド14942
http://news.mynavi.jp/articles/2016/10/11/windows10/
バックナンバー 一覧へのリンク
http://news.mynavi.jp/tag/0021413/
Windows 10 すべてがわかる特集記事はこちら
【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
http://news.mynavi.jp/special/2015/windows10/