2016年9月21日(以下すべて米国時間)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14931を、ファーストリングを選択したPC向けにリリースしたことを公式ブログで明らかにした。一部UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)の改善やUSB Audio Class 2.0のネイティブサポートが加わっている。

USB Audio Class 2.0用インボックスドライバーを内包

今回の新OSビルドはMicrosoft WDG(Windows and Devices Group) ソフトウェアエンジニアのDona Sarkar氏が、21日昼頃(日本は22日未明)から当日リリースすることをツイートしていた。Twitter利用者はカウントダウンを行うなど盛り上がりを見せていたが、最終的にダウンロードを確認できたのは21日15時(日本は22日7時)頃。インストール自体は難なく完了したが、目を引くのはリリースタイミングである。Redstone 2(開発コード名)は約半月ごとにリリースしていたが、前回のOSビルド14926が9月14日リリースだったことから、再び"週間Windows 10"が始まるのかも知れない。

さて、Sarkar氏いわく「本ビルドは注目すべき新機能を持っていない」が、最大の変更点はUSB Audio Class 2.0対応である。USB-IF(Implementers Forum)が定めた規格だが、最大転送速度や対応する規格が異なり、プロ仕様のオーディオデバイスにはUSB Audio Class 2.0のサポートを求めるものあるという。不明確な表現なのは筆者がオーディオ界隈に対して門外漢であるためだ。今回改めて調べたところ、各デバイスベンダーがWindows上で動作するUSB Audio Class 2.0用ドライバーを用意しているが、OSレベルでサポートされるということは、インボックスドライバーで各デバイスが動作するため、その利便性は大きい。

Microsoft Windows Audioチーム シニアソフトウェアエンジニアのMaurits氏による公式ブログによれば、OSビルド14912以降で動作し、デバイスマネージャーから対象となるデバイスドライバーを手動で更新し、インボックスドライバーの「USB Audio 2.0」を選択すればよいそうだ。これでデバイスドライバーがMicrosoft製クラスドライバーに置き換わり、USB Audio class 2.0デバイスが動作するという。ただし、本バージョンのデバイスドライバーは初期レベルであり、再生(レンダリング)可能ながらも録音(キャプチャー)が未実装など、いくつかの機能が有効になっていない。もちろんこの点は今後改善される予定だ。

Windows 10上で動作するUSB Audio Class 2.0デバイスドライバー(公式ブログより抜粋)

UWPアプリケーションについては、OSビルド14931とは別に個別の進化が加わっている。公式ブログでは、「フィードバックHub」「マップ」「Skypeプレビュー」の変更点を紹介していた。まずフィードバックHubは、バージョン1.1608.2441.0以降で新たに加わった<設定>ボタンから、Windows 10のテーマカラー(アプリのモード)に追従および選択可能になっている。

「フィードバックHub」ではテーマカラーの選択が可能になった

「マップ」はバージョン5.1609.2580.0以降で、道路の交通情報を地図上に表示するオプションが加わった。また、フィードバックHubと同じくWindows 10のテーマカラーの選択に加えて、「マップのテーマ」が選択可能になっている。どちらも白/黒のいずれかを選択するものだが、Windows 10を黒色系配色で使っている方には、次々とアプリケーションまで黒く染め上げられるという利点となるだろう。

「マップ」で<交通情報>のスイッチをオンに切り換えた状態。道路の混雑状況が赤色や黄色で示される

こちらは「マップ」の設定画面。配色に関する設定が加わった

最後のSkypeプレビューは、SMS(ショートメッセージサービス)/MMS(マルチメディアメッセージングサービス)への対応。Windows 10 Mobile Insider Previewで「メッセージングアプリ」を既定の「Microsoftメッセージング」ではなく、Skypeプレビューを選択。そして、Windows 10側のSkypeプレビューでSMSの同期を有効している場合、SMSリレー機能を使ってSMS/MMSメッセージの共有が可能になるという。筆者はWindows 10 Mobile Insider PreviewをインストールしているデバイスのSIMカードが無効になっているためか、動作を検証できなかったが、異なるデバイスで共通のメッセージを送受信できる恩恵は大きい。

Windows 10 Mobile Insider Preview 14926の「設定」から<システム/メッセージング>を開くと、「メッセージングアプリ」が設定可能になっている。Windows 10 Mobileバージョン1607にはない設定項目だ

Windows 10 Insider Preview 14931上のSkypeプレビューでSMSの同期をオンにする(ただしMicrosoftの説明と異なるため、異なる設定項目かも知れない)

動作検証できなかったため、Microsoftが掲載した画像を紹介。メッセージの送信元として携帯電話の番号をチャットウィンドウ下部で確認できる(公式ブログより抜粋)

元々SkypeによるSMS/MMSのサポートはWindows 10 バージョン1607の時点で予定されていた。Microsoftは当初「Messaging everywhere」として、Windows 10 Mobile上の「メッセージング」によるSMS/MMSメッセージの共有を目指していたが、IM(インスタントメッセージ)をSkypeに統一する方向を明確にするために実装を見送った経緯がある。The SkypeチームはWindows開発チームが集まる米Redmondではなく、英Londonで開発に携わっていたが、Financial Timesの記事によれば、MicrosoftはLondonオフィスを閉鎖して一部開発部隊の統一と余剰人員へ対応すると報じた。SkypeをOffice 365の中核コミュニケーションツールに位置付けていることを踏まえると、今回のような機能強化は開発チームの統合により加速するだろう。

ここからはPC版の修正内容と既知の問題を紹介する。まずはPC版の修正箇所から。

  • 別のユーザーアカウントへ切り換えると黒い画面が表示され、サインインに失敗する問題を修正した。
  • 「電卓」「アラーム&クロック」「ボイスレコーダー」など1部のUWPアプリケーションが正しく動作しない問題を修正した。

次はPC版で確認された既知の問題を紹介する。

  • 「ナレーター」と「Grooevミュージック」を同時使用中に、コントロールが利かない問題を確認している。
  • VirtualBox上でWindows 10 Insider Preview ビルド14926にアップデートすると、起動時にクラッシュする問題を確認している。
  • 「Windowsの機能」によるコンポーネントの管理が正しく動作しない。その場合は、1度チェックボックスのオン/オフを切り換えてPCを再起動してから、再び有効にする。
  • 「設定」で[Tab]キーを押しても応答しなくなる。Microsoftは矢印キーによる操作を推奨している。
  • Tencent製アプリケーション/ゲームを実行すると、BSoD(BlueScreen of Death)が発生する問題を確認している。

冒頭で述べたように今回はモバイル向けOSビルド14931のリリースは見送られた。これは、OSビルド14926へアップグレードした後に、PINパッド(PIN入力用の数字キーボード)が表示されず、ロック解除できない問題が1部のインサイダーで発生しているからだ。前回も述べたように、この問題が発生するとWindows 10 Mobileデバイスのハードリセットが必要になる。この問題を重視した開発チームはOSビルド14931のリリースを見送ったのだろう。筆者は幸いにも同トラブルに見舞われていないが、Windows 10 Mobileデバイスをハードリセットする際は、こちらをご覧頂きたい。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第66回) - 来春リリースの次期バージョン向け開発進むOSビルド14926
http://news.mynavi.jp/articles/2016/09/15/windows10/
バックナンバー 一覧へのリンク
http://news.mynavi.jp/tag/0021413/
Windows 10 すべてがわかる特集記事はこちら
【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
http://news.mynavi.jp/special/2015/windows10/