周辺ビジネスを含めた商圏の広がりに可能性

ラジオ広告費は近年、最盛期の半分程度となる1,200億円台で推移している。これを従来型の手法、つまりは放送局が手売りでラジオCMを獲得する方法で盛り返すのが難しいというのは、ラジオ関連の取材を進めている時によく耳にした話だ。しかし、ラジコ独自の広告枠が整い、プラットフォームとしてのラジコに連携する周辺ビジネスのマネタイズが上手くいくようになれば、ラジオが以前の勢いを取り戻すどころか、3,000億円を超えるビジネスに成長するのも夢ではないというのが三浦教授の見立てだ。

ただし、三浦教授が考えるラジコは、誰でも参加できるプラットフォームではない。ラジコはネットラジオなので、聞き手の属性を把握して広告を打つことも可能だが、広告ならば何でもアリというわけにはいかないというのが三浦教授の考え方だ。ラジオが長年の放送実績で培ってきた信頼感や、これまでに構築してきたリスナーとのつながり。更には災害時の緊急情報などを放送する社会インフラとしての側面などを考えると、ラジオが信頼性を重要視するのは当然の話だ。

ラジオの信頼性を背景とするラジオCMには、企業のブランディングに役立つ部分がある。一方でネット広告は、リスナーの属性に合わせた効果的な情報発信が可能だ。両者の良い所を上手くチューニングし、ハイブリッドな仕組みを確立する必要があると三浦教授は指摘する。それは広告に限った話ではなく、プラットフォームとして連携相手を選ぶ際にもラジコは信頼性を重視する。これはラジコに参画する側にとって参入障壁ともいえる側面だが、ラジコのユーザーにとっては安心感につながる要素でもある。

10月11日の昼前にタイムフリー聴取に対応したPC版ラジコを早速チェック。確かに前日放送分の深夜番組を聴くことができた。「シェア」ボタンを押すと、facebookおよびtwitterで番組を共有したり、URLをコピーしたりするという機能が立ち上がる。「通知を予約」ではカレンダーアプリに放送予定を追加できるようだ

ラジオを核に拡張し続けられるか

ラジコがフェーズ3へと進むことで、ラジオを中心とするエコシステムは相当な広がりをみせる可能性がある。しかし、求心力となるラジオ放送は信頼性を担保するので、誰もが参加できる仕組みとはならない。このような在り方を三浦教授は「里山のようなプラットフォーム」と表現する。さまざまなプレイヤーに開かれた、多様性のあるプラットフォームでありつつも、里山のように人の手(参加者を選ぶラジオ放送の目)が加わることによって、「美しさ」が保たれるメディアをラジコは目指していく。

三浦教授がラジコを作ったときに大事にしたのは拡張可能性だ。実際にタイムフリーに対応したり、プラットフォーム化を目指したりできるのも、ラジコに拡張の余地があったからだということができる。このままラジコが拡張を続けていけば、放送とネットが融合した、独特のプラットフォームとして存在感を発揮することも夢ではないだろう。