「ワイヤレスイヤホンは音が悪い」と言われていたのは昔の話。Bluetoothの通信技術が進化した今、デザインや装着感だけでなくサウンドの質も高くなった。次期iPhoneではイヤホン端子がなくなるという噂もあり、ワイヤレスイヤホンへの注目は日増しに高まっている。

海外ブランドのイヤホン特集に続いて、今回も「1万円台で買える」をキーワードに、コストパフォーマンスの高いBluetoothイヤホンを5つ選んでみた。Bluetoothイヤホン選びのポイントに触れつつ、紹介していきたい。

ソニー「MDR-AS800BT」

[発売時期] 2014年10月 [価格] 直販13,880円(税別) [カラー] ブラック、ブルー、ホワイト 
[充電時間] 約2時間 [駆動時間] 約4.5時間 [質量] 16g

Bluetoothイヤホンが有線のイヤホンと異なるのは、バッテリーを搭載していることだ。コントロールボックスと呼ばれる部分に電気回路やバッテリーを内蔵し、左右ユニットをつなぐケーブルに組み合わせるデザインが一般的だが、コントロールボックスの位置によってはぶらついて邪魔になることもある。

「MDR-AS800BT」は、コントロールボックスをイヤホン本体に格納し、コンパクトなデザインにまとめているのが大きな特徴だ。操作用のボタンは右ユニットに搭載。一つのボタンで音楽の再生/停止やハンズフリー通話の操作を行える。また、アークサポーターと呼ばれるフィン状のスタビライザーを耳のくぼみに装着することで安定感を高め、本体の重みを感じさせないよう工夫している。サウンドは、線が太く輪郭がハッキリとした力強い中低域が特徴で、ダンスミュージックのビートが腹の底に響く。生楽器の音色はやや固めだが、むやみな色付けがなく自然だ。

フィリップス「TX2BT」

[発売時期] 2015年11月 [価格] 実勢15,900円前後 [カラー] ブラック、ホワイト 
[駆動時間] 約5.5時間 [質量] 約15.4g

「TX2BT」は、有線モデルの使い心地を取り入れつつBluetooth化したワイヤレスイヤホンだ。コントロールボックスはケーブル上に設けられているが、小さく軽量なので身に着けても負担を感じない。リモコンユニットはケーブルの左側に配置しており、自然なスタイルでハンズフリー通話を楽しめる。

ベースモデルである「TX2」は、フィリップスの上位シリーズ「Fidelio」の高音質設計を投入した高コスパ機として人気のモデルだ。TX2BTは、13.5mmの大口径ドライバーを搭載し、ハウジングは半密閉型構造。サウンドは力強く厚みを持ちながらも、高域の爽やかな抜け感と中音域の濃密さが引き立つ。低域は引き締まっており、クールなスピード感がよい。また、ボーカル曲では歌声の生命力が伝わってくる。フィリップスの音楽共有機能「MusicChain」を搭載し、TX2BTで聴いている音楽を、同機能に対応した他のイヤホンやヘッドホンとワイヤレスで共有できるのも見逃せないポイントだ。

JBL「REFLECT RESPONSE」

[発売時期] 2016年2月 [価格] 直販17,880円(税別) [カラー] ブルー、ブラック、レッド 
[充電時間] 約2.5時間 [駆動時間] 約10時間 [質量] 約44g

スポーツ中の使用に向いたイヤホンで、走りながらでも手軽にリモコンを操作できる「タッチコントロールテクノロジー」を搭載。ハウジングの表面部分にタッチセンサーを内蔵し、ハウジングに触れることで音楽再生やハンズフリー通話の操作が行える。操作方法の習得には少し慣れが必要だが、センサーの反応はスピーディで正確。軽快なタッチ操作は運動中だけでなく、街を歩きながら音楽を聴く場合も有効だった。

スポーツ用のイヤホンを選ぶ際に気になるのは装着感だが、本機もスタビライザーを耳の窪みに固定すると安定したフィット感が得られる。コントロールボックスは肩に乗せるタイプで、汗に強いつくりとなっている。サウンドはバランスを重視しており、素直で色付けが少ない。また、低音のビートが筋肉質で引き締まっており、ダンスミュージックやロックが気持ち良く聴ける。

Klipsch「R6 Bluetooth」

[発売時期] 2016年2月 [価格] 直販16,880円(税別) [カラー] ブラック [充電時間] 約1時間 
[駆動時間] 約8時間 [質量] 23.5g

米国を代表するスピーカーブランドのKlipschが2014年に発売したロングセラーイヤホン「Reference R6」。ここで紹介する「R6 Bluetooth」は、Reference R6をベースに開発されたBluetoothイヤホンだ。スピーカーを思わせる明瞭で広々としたステレオイメージ、音源の確かな定位感、中高域のすぐれた解像感はそのままに、ネックバンド+耳掛けスタイルによる安定した装着感を実現。コントロールボックスは、イヤーハンガーに内蔵することで装着時の負担を軽減している。1時間でフル充電され、約8時間の連続再生が楽しめるという、バッテリー持続の粘り強さもうれしいポイントだ。

Bluetoothイヤホンの音楽再生能力を知る指標として、音声信号を圧縮して伝送する「コーデック」にも注目したい。一般的な「SBC」のほか、iOS機器との接続時により高品位なサウンドが楽しめる「AAC」、Androidスマホなどで採用が広がる上位コーデック「apt-X」があるが、本機はその全てをカバーしている。今回は、apt-X対応のAndroidスマホとつないで試聴したが、ジャズやクラシックのライブ演奏ではより立体的な音場感が広がり、本機の底力が引き出せた。

オーディオテクニカ「ATH-CKS550BT」

[発売時期] 2016年7月 [価格] 実勢10,700円前後 [カラー] ブラックゴールド、ホワイト 
[充電時間] 約3時間 [駆動時間] 約5時間 [質量] 約32g

「ATH-CKS550BT」は、豊かな低音再生を実現した「SOLID BASS」シリーズのBluetoothイヤホン。ケーブルガイドの左右先端にリモコンや電源ボタンを配置し、スムーズなボタンクリックによる快適操作を実現している。最近流行している「肩のせタイプ」のコントロールボックスを採用しており、「イヤホン部が重くなるのは嫌だし、コントロールボックスを身に着ける負担は抑えたい」というわがままに応えてくれる。また、ATH-CKS550BTはイヤホン部が大きすぎないので、女性でも身に着けやすいと思う。

肝心のサウンドは、シリーズ名の通り中低域がはっきりとしている印象だ。しかし低音ばかりが強調されているわけではなく、聴感上のバランスはあくまで自然。輪郭線をはっきりと描きながら全体のつながりも重視しており、しなやかなで弾力感のあるベースがジャズやロックの音源の躍動感を高める。温かみがにじみ出るようなボーカルの再現性も持ち味といえるだろう。

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最近は、近距離無線通信の「NFC」に対応したスマホやポータブルプレーヤーが増えている。同じくNFCに対応するBluetoothイヤホンなら、面倒なBluetoothのペアリング設定もワンタッチでできるので、初めてBluetoothイヤホンを使う人にはおすすめしておきたい。今回紹介した製品の中では、ソニーのMDR-AS800BT、フィリップスのTX2BT、オーディオテクニカのATH-CKS550BTがNFCに対応している。

Bluetoothイヤホンはまさに今が買い時。自分好みの音質や装着スタイルに合った、快適なポータブルリスニング環境を手に入れよう。