ラジオ記事を収益化する方法は
「リスナーを増やしつつ、運用コストを広告営業でまかない、持続性のある広告・宣伝活動として定着させるのがミッション」。番組の記事化は新規リスナーの獲得につながるが、同事業を続けていくためには単独で収益化することも重要と藤井氏は語る。
収益化の仕組みとして、TOKYO FM+が取り入れている手法はアーカイブの有料化と広告だ。同サイトでは、番組の宣伝効果が高い直近の記事は無料で提供しつつ、主に番組のコアなファンが読みにくるであろう過去記事については有料コンテンツとし、プロモーションと収益化の両立にトライしている。
TOKYO FM+の広告メディアとしての側面を見ると、同サイトではバナー広告を受け付けているほか、広告記事の販売にも取り組んでいる。TOKYO FMで特別番組を放送するスポンサーに対しては、同サイトを使った番宣を提案することも可能だ。TOKYO FM+をビジネスとして見た場合の収支について詳しい話は聞けなかったものの、藤井氏は黒字化も近いとの手応えを得ている様子だった。
番組制作にも役立つフィードバック
新規リスナーの獲得につながり、単独での収益化も達成可能だとすれば、ラジオ局が番組の記事化を行う意義は大きいといえそうだが、この取り組みにより、読者・リスナーから得られる反応もTOKYO FMにとっての収穫となっているようだ。
記事の反響はPV数となって明確に現れるため、TOKYO FMは様々な記事を作成することで、読者・リスナーが関心を持っているテーマや、世間の注目を集めているアーティストなどについて情報を得ることができる。これを番組作りにフィードバックすれば、本放送の魅力が高まり、ひいてはTOKYO FMの広告媒体としての価値が向上するという好循環が生まれるのだ。
TOKYO FM+はネット上のサテライトスタジオ
番組知名度の向上、新規リスナーの獲得、収益化、番組制作へのフィードバック。ラジオ局が番組の記事を作成する意義は多岐にわたるが、一番の目的は本放送のリアルタイム聴取者を増加させることだと藤井氏は強調する。
「(TOKYO FM+を)21世紀のスペイン坂スタジオにしたい」。行き交う人にTOKYO FMの情報を発信し、人を集め、集まった人に番組を聴かせる場所という意味で、藤井氏はTOKYO FM+をネット上のサテライトスタジオのような存在に育てたいと語る。渋谷PARCOパート1の建て替えに伴い、同ビルの1階に入居していたスペイン坂スタジオが23年の歴史に幕を下ろした今、TOKYO FMの玄関口として、TOKYO FM+の存在意義はますます高まっているといえそうだ。