東京農業大学(東農大)は7月28日、福島県の中山間地に生息する節足動物体内の放射性セシウム量の推移を解明したと発表した。
同成果は、東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科 足達太郎教授らの研究グループによるもので、7月20日付けの国際科学誌「Journal of Environmental Radioactivity」に掲載された。
同研究グループは、福島県の中山間地で採集した節足動物の放射能汚染状況について調査を行ってきた。この調査の結果、節足動物から福島第一原発事故に由来するものとみられる放射性セシウムを検出。詳細に解析した結果、2012年から2014年にかけて、植食性のバッタ類と雑食性のコオロギ類に蓄積された放射線セシウムの量は一貫して減少する傾向にあることが明らかになった。これは主に、節足動物の餌が存在する農耕地および住宅地周辺の除染作業と放射性セシウムの自然減衰によるものと推測されるという。
一方、造網性クモ類に蓄積された放射性セシウム量には減少傾向はみられず、2014年9月の時点で、調査した節足動物のなかでもっとも高い204Bq/kgが検出された。造網性クモ類が餌とするハエ類などの飛翔性昆虫は、除染作業が行われない山林や池などにある放射性物質を多く含む腐植などを餌とするため、このような高濃度の放射性セシウムが検出されたものと考えられるという。
また、節足動物に蓄積された放射性セシウム量と生息地の空間放射線量率とのあいだには、有意な正の相関がみられ、食性の異なる節足動物に蓄積する放射性セシウム量が中山間地生態系における放射能汚染状況を反映していることが示唆された。
今回の結果について同研究グループは、今後の農業復興に向けて、除染効果を判定する新たな指標としての節足動物の活用が期待されるとしている。