新規性と意外性のあるメニュー
もうひとつのスターバックスにおけるキーワードは「サプライズ&デライト」。常に驚きと楽しさを提供するという意味である。スターバックスがコンビニコーヒーや、そして昔ながらの喫茶店とも差別化できる点であるのが、コーヒーだけでない独自の商品ラインナップだ。スターバックスのメニューにおけるファンも多い。水口氏は「商品の開発力は本当に強みだと思っています」と自信をのぞかせる。
その根拠はコーヒーや果汁などにゼリー・果肉を入れたフローズンドリンク・フラペチーノの人気だ。スタンダードな製品に加え季節のおすすめも用意されており、新製品は発表されるたび常に話題となる。フラペチーノに続く大人気商品をどう開発していくかという課題はあるというものの、フラペチーノそのものは日本で開発された商品が国内だけでなく中国でも売り出された実績もあり非常に好評だ。
コンビニや喫茶店で用意できないような新規性と意外性の高いメニューを投入し続けることで、スターバックスならではの魅力を作り出し、ユーザーの囲い込みにつながっているといえる。
体験を売るスターバックス
現在、ユーザーの購買傾向は「モノを買う」から「体験を買う」に移行している中、スターバックスではこれまでのパートナーによるおもてなしやゆったりとした空間、他では味わえない製品に加え、先に紹介したような新形態の店舗で新たな体験を提示しようとしている。
ただし、新形態店舗についてはまだ試験的な運用の段階であるため、どれだけ今後、幅広いユーザーに受け入れられるかは未知数だ。店舗のコンセプトを聞いて「スターバックスらしくない」と感じるユーザーもいるのではないだろうか。水口氏は「時代の変化に合わせて多様性、そしてお客様の価値観・変化に合わせたスタイルの提案を継続して、自分たちの殻を破っていくのが必要」と話す。
とはいえ、同じ本格コーヒーを飲むにせよ、コンビニコーヒーが安く手軽にとモノとしての魅力を高めているのに対し、スターバックスではユーザーの体験を重視する、とモノと体験とで姿勢が対照的なのは明らかだ。日本のコーヒー市場が拡大している中、ユーザーの楽しみ方も多様化している。そんな現状において、スターバックスがどこまで魅力的な体験を提供して、さらなるファンを獲得できるかが気になるところだ。