2020年に1500店舗を目指す

また、水口氏は「正直に申し上げまして、あまり社内でどこのコンビニがという話はしておりません」と強気だ。では、コンビニコーヒーが市場を席巻した2013年以降において、スターバックスの業績はどう変化しているのだろうか。売上高は、2013年3月期が1,165億2,500万円、2014年3月期が1,256億6,600万円と上昇している。2015年度の数字については、スターバックス コーヒー ジャパンが2015年3月にスターバックスコーポレーションの100%子会社になったため公開されていないものの、水口氏によると増収増益の基調を保っているという。

もうひとつ着目したいのが店舗数。コンビニコーヒー普及前の2012年度が985店なのに対し、2015年度は1178店と1,000店を超えている。2014年度から2015年度にかけて82店舗増えており、この増加ペースは創生期を除くと2007年のリーマンショック前に次ぐ2番目に高い増え方だ。そして、前CEOの関根純氏が目指した「2020年には1500店舗を目指す」という方針は引き続き維持していくという。

コンビニコーヒー隆盛にもかかわらず、スターバックスは店舗が増加し勢いを増している。その秘密はいったいどこにあるのだろうか。

スターバックスの店舗数の推移

昔ながらの喫茶店を思わせる新形態店舗

コンビニとスターバックスが違う点、ひとつはスターバックスが昔から提唱しているキーワード「サードプレイス」だ。自宅でも職場でもない第3のくつろげる場所という意味である。コーヒーだけではなく、居場所を提供しているというわけだ。コンビニでは提供できない空間がスターバックスの強みのひとつである。また、パートナーと呼ばれる店舗スタッフによるおもてなしも欠かせない要素だ。

しかし昨今、スターバックスはこのサードプレイスのあり方を多様化させ、今までの店舗では考えられないようなスタイルの店舗も送り出している。例えばバリスタが客と話をしながら一杯一杯とコーヒーを入れてくれるカフェ「EXPERIENCE BAR」、従来の店舗のように駅前や繁華街ではなく、住宅街でコーヒーを飲みながらゆったりとした時間が過ごせる「Neighborhood & COFFEE」、そして女性向けにワインなどアルコール類を提供する「EVENINGS」の3つだ。

このうち、「EXPERIENCE BAR」や「Neighborhood & COFFEE」はスタンダードな店舗に比べ、おもてなしやゆったりと過ごせる時間というものをさらに重視しているのが特徴で、昔ながらの喫茶店に近い価値観の店舗になる。喫茶店と差別化をはかり発展してきたスターバックスが喫茶店に回帰するといってもいいだろう。

今までのスターバックスとは違う形態の店舗もオープンされている

また、今後のスターバックスで危惧されるのが、都市部で出店が飽和状態になり利用客から飽きられること。しかし、新しいスタイルの店舗を投入すれば周囲の店舗とサービスが重なるリスクは減る。水口氏は店舗数については具体的に明かさなかったものの「都心部ではもうちょっと多様化した店舗の形態が必要になってくるでしょう」と、新形態の店舗を織り交ぜていく旨を匂わせていた。