OTTとの相互作用で更なる進化

資本提携こそなくなったものの、Y!mobileにとってヤフーとの関係は非常に大きなものとして残っている。「当時ヤフーはポータルサイト、OTT(Over the Top)としてはNo.1という位置付けでしたが、あくまでパソコンでの話でした。我々もヤフーもスマートフォンにシフトしようとしているということから両者の利害が一致したわけです。そしてY!mobileのスマートフォンにはYahoo! IDでアクセスする仕組みを作り、ヤフーのトップページにアクセスすると翌月のパケットが増えるような仕掛けも作りました」その結果、かなりの割合のユーザーがヤフーにアクセスする導線ができたという。Y!mobileはヤフーへのアクセスを増やすことでキックバックが得られ、ヤフーはアクティブなユーザーが増える。両者にとってWin-Winな関係というわけだ。

iOSがiCloudのIDを、GoogleがGoogle IDをそれぞれサービスの基軸としているように、Y!mobileではYahoo! IDがメインのアカウントとなる

また、ヤフーとの提携の強みを生かせるのがショッピングだという。寺尾氏は、「最近はECサイトのYahoo!ショッピングも出店数や品揃えがすごくよくなって、調べてみると最安値がYahoo!ショッピングだったりするんです。Yahoo! IDでトップページにアクセスしてもらえる導線は築けたので、次はeコマースへつなげられれば、その次は周辺機器を買っていただくというような仕掛けを提案もできる。Yahoo! IDでアクセスしていればリコメンドの精度も上げられます」と語る。

ECサイトとしても最大級になったYahoo!ショッピングと連携。この先にはIoT的デバイスの導入も検討しているのでは、という気配が濃厚だ

大手キャリアでも「dマーケット」(ドコモ)や「au WALLET Market」(KDDI)といったECサービスがスタートしているが、規模としてはヤフーのほうが比べものにならないくらい大きい。これに対抗できるのは、ポイント等で楽天市場との連携が狙える楽天モバイルくらいだろう。寺尾氏は、「顧客基盤ができてくると、次はOTTの勝負になるので、日本一のヤフーと組んでいるメリットは大きいと思っています」と胸を張る。