2年前にソフトバンク傘下に入って以降、前身となるウィルコム譲りの音声定額と低価格、そしてイー・アクセス譲りのデータ通信を武器に、着実に支持を広げてきたY!mobile。昨今はiPhone 5sの取り扱い開始や、最安で月額1,980円のプランを提供するなど、次々と新しい施策で話題を振りまいている。こうした積極的な戦略はどのようにして打ち出されているのか、ソフトバンクのY!mobile事業推進本部本部長、寺尾洋幸氏にお話を伺った。
スマートフォンの便利さを多くの人へ
Y!mobileは、もともとPHS事業を展開していたウィルコムと、主にモバイルルーターによるデータ通信中心に展開していたイー・アクセスが合併し、その後2014年にヤフージャパンと提携、2015年にソフトバンクに吸収された経緯がある。ウィルコムもイー・アクセスも合併前からソフトバンクグループの一員ではあったが、どちらもスマートフォンをやるなら一緒になったほうがいい、という経営判断から合併に至ったのだという。
事業運営にあたることになった寺尾氏だが、何を売りにするかが問題となった。ウィルコムもイー・アクセスも、どちらも価格の安さを売りにしたキャリアだった。「安売り同士が合併して安売り会社を作るのか? という話です。安売りだけでは何年も続かないことはわかっていました」そんなときにヤフージャパンから「一緒にやろう」という声がかかったのだという。
ウィルコム、イー・アクセス、そしてヤフーが膝を交えて事業目標を決めることになったとき、ヤフーの宮坂学社長から非常に学ぶところが大きかったという。「我々は通信が速いとか安いということは言えましたが、理念を言葉にする、という概念がなかったんです。通信を広げることで生活が便利になるということはわかっていましたが、それを言葉にできていなかった。ソフトバンクグループに入ってから、マーケティングというものについて、ものすごく勉強させてもらいました」結果的にヤフーとの資本提携こそ成らなかったが、このときの経験がいまのY!mobileには大きく作用している。
Y!mobileが掲げる理念を、寺尾氏は「インターネットの生み出す楽しさ・便利さをユーザーの手元に届けること」と定義する。
寺尾氏は、この理念について「スマートフォンが普及して便利になる一方で、地方では自分の父親、母親のような世代が、一人では買い物にも行けないくらい不便になっているんです。都会では注文して3時間で品物が届く一方で、クルマがなければ1時間半くらい歩いていかなければ買い物もできないような地域がある。最終的にはそういう人たちにも便利さを届けたい。それは最終的にはスマートフォンじゃなくて、ボタンひとつで決まったものが届くようなものでもいいかもしれない」と説明した。