VRの先に見据えるは「Tango」との融合か

だがDaydreamでグーグルが狙うのは、単にプラットフォームを掌握することだけではないようにも思える。それを示しているのが「Tango」である。

Tangoは、以前「Project Tango」と呼ばれていたもので、スマートフォンに複数のカメラやセンサーなどを搭載し、空間を正しく認知するという、グーグルが開発している技術である。現実世界の空間を正確に測ってスマートフォンの画面上にそれを反映できることから、拡張現実(AR)を進化させる技術として高い注目を集めてきた。

「Tango」に対応したデバイスでジェンガゲームをプレイしているところ。実空間を正確に認知することで、オブジェクトがその場にあるような感覚を味わえる

これまでTangoに対応した端末は、開発者向けのタブレット型デバイスしか存在しなかった。だが今年1月のCESで、レノボがTangoに対応したスマートフォンを開発していることを公表。そして6月には、Tangoに対応した6.4インチのファブレット「Phab2 Pro」が発表されている。

Phab2 Proは通常のカメラに加え、深度や動きを測るカメラと、3つのカメラを搭載しているのが大きな特徴。これら3つのカメラを用いることで人間の知覚に近づけ、位置や他の物体との位置関係を把握することにより、実空間を生かしたコンテンツを実現できるようになる。

Tangoに対応するスマートフォンには、通常のカメラのほか、深度を測るカメラ、そして物体の動きを認識するカメラの3種類が搭載されている。Phab2 Proも同様だ

現在のところ、TangoとDaydreamは別々の存在として提供されており、Phab 2 ProもDaydreamに対応しているわけではない。だが高度な表現が可能なVRと実空間を正しく認知できるAR、双方を組み合わせれば、現実と非現実が融合し、あたかも現実の空間に仮想の物体や人物などが現れ、操作したり体感したりできるいま注目の技術「複合現実」(Mixed Reality、MR)が実現できる。

グーグルは現状、あくまでVRの盛り上がりを支えるDaydareamと、将来を見据えた新しい取り組みとなるTangoを個別に提供しているように見える。だが将来的にはそれらを融合させてMRを実現し、ゲームなどだけにとどまらないより広い分野での技術活用を目指しているのではないだろうか。先の世界を見越して新技術への投資を続けるグーグルだけに、一見別々に見える動きが、1つの線につながる可能性は十分あり得るのではないかと、筆者は考えている。