アプリの機能の分断と、カード型UIでの流通は、アプリ開発者に対してのビジネスモデルの転換を迫ることになる。もしも開発者が自分のアプリの中で広告を表示することで収益を得ているのであれば、そのモデルを転換すべきかどうか、悩むことになるだろう。
カード型UIは、小さなiPhoneの画面の中にさらに小さな領域を作って表示するため、広告を配置したとしても、そのユーザビリティは著しく下がることになり、あまり現実的ではない。
そのため、アプリ内の広告モデルを維持しながら、通知機能の活用を必要最低限に抑えるか、リッチ通知の活用に踏み込んで、月額料金を含む他のビジネスモデルに転換するか、選択しなければならなくなるだろう。
また、ユーザーのiPhone利用について、通知をきっかけとした受動的な利用をする際の利用時間を短縮する可能性がある。
例えばLINEの場合、一つのグループに新着メッセージがあってアプリを開いて返信や会話をしている最中、もしくは済ませてから、他のスレッドに移ってメッセージを読んだり返信したりする「チェーン」を経験したことはないだろうか。
リッチ通知で目的のスレッドへの返事や会話をする場合、その会話が済んだら、戻るのはアプリのスレッド一覧ではなく、ロック画面になる。つまり、前述のチェーンが起きにくくなる可能性がある。このことが広告モデルをマイナスだと考えるのであれば、前述のビジネス転換はなおさら必要になる。
また、ゲームでのリッチ通知の活用も新たな体験を生み出すかもしれない。
たとえば、位置情報を活用した陣取りゲームIngressの場合、自分のポータルが攻撃されていることが通知される。その際、リッチ通知の中で、自分のポータルに設置されているレゾネーターの回復を行えるのであれば、アプリを開くタイムラグなく、ポータルを守れる可能性がある。あるいは、重要なポータルに到着した際に、リッチ通知からハックを行えると、快適なプレー体験を作り出せそうだ。