開発者とつくる体験というブランド

iOS 10では、10の新機能に注目してプレゼンテーションが行われた。この中でのキーワードは「APIの公開」だ。

音声アシスタントのSiri、地図アプリ、メッセージアプリという、iOSの主要な体験を構築するアプリについて、開発者が関与するチャンスが与えられたのだ。その方法は、開発者のアプリの機能を、Siriや地図、メッセージの中から、アプリを切り替えずに利用できるようにする、というものだった。

メッセージアプリ、地図、SiriといったiOSの主要アプリのAPIを開発者に公開。新たなアプリとしての発展が見込めるように

アップルのアプリはiOSというプラットホームの上で動いており、その構造は開発者のアプリも同様だが、アップルはSiriや地図、メッセージのアプリをプラットホームとして、その上で、開発者のアプリの機能を実行できるようにしたのである。

開発者は、自分のアプリを開いてもらわなくても、タクシー予約やレストラン予約、個人間送金といった機能を利用できるようになる。ユーザーは、メッセージや地図検索といった目的のアプリを離れずに、他のアプリの機能にアクセスする利便性がもたらされる。

地図アプリからレストランの予約やタクシーの予約が行えたりする

一般的に、アップルのプラットホームは閉鎖的だ、という印象を持たれやすい。しかし、アップルはWWDCのたびに、ユーザー体験を開発者とそのアプリによって作り出すことを強調し、連帯感を高めることを主張してきた。

今回のように、自前の個別のアプリを開発者に対してアクセス可能な「場」として設定する様子は、開発者の自由度を高める方向性に進めていくことを再確認するような行動、と捉えることができる。

その一方で、アップルは開発者の関与もまた、同社が作り出す整然とした体験の上で展開できるようにしている。結果として、洗練されたユーザー体験に開発者が参画する、という構図を作り出すことができるだろう。

グーグルはAndroidプラットホームの牽引を、グーグルのサービスを中心にして行っているように映る。この点が、アップルとグーグルの違いとして見出すことができるのだ。