そろそろタブレットも気になるけど、高いし、使いこなせなかったらもったいない、と思って手をこまねいていないだろうか? そんな人に強くお奨めしたいのが、Amazonの格安タブレット「Kindle Fire」だ。史上最強とも言えるそのコストパフォーマンスの高さを、独断と偏見でご紹介しよう。
はじめに: iPadがいい人はiPadを選ぼう
まず最初にお断りしておきたいのだが、タブレットをガンガン使いこなしたい、いろんなアプリを入れてビジネスシーンや趣味の領域でフル活動させたい、という人は、迷わずiPadを選ぼう。現在、市場にはiPadとAndroidタブレット、それにWindowsタブレットの3種類があるが、高性能がある程度保障されていて、対応周辺機器も多く、ゲームを含んだ専用アプリが豊富に用意されている、という条件に合致するのはiPadだけだと思う。できるだけ予算を多めに確保して購入したい。
一方、タブレットをちょっとお試し的に使ってみたいという人や、スマートフォンの画面じゃ狭くてWebも見づらいし、もう少し大きい画面でダラダラとWebなどを見るのに使いたい……という程度の興味で止まっているユーザーに強くオススメなのが、今回ご紹介する「Kindle Fire」だ。Kindle Fireは、できることがやや限られる反面、非常にコストパフォーマンスに優れた端末なのだ。
Kindle Fireはこんな端末
それではKindle Fireのハードウェアを見ていこう。Kindle Fireはディスプレイサイズが7インチの小型タブレットだ。スマートフォンが大型化して6インチ近い端末も増えていることを考えると、ディスプレイの広さという点ではインパクトはあまり大きくないが、コンテンツは見やすく、持って手に疲れないサイズとなっている。
最大の特徴である価格は、なんと8,980円(税込)。これだけでも相当安いが、Amazonの有料サービス「Amazon Prime」(年額3,900円、税込)に加入しているユーザーは4,000円引きの4,980円で購入出来る。筆者としては、ぜひこのAmazon Primeと組み合わせて購入することを強く強くお勧めするところだ。ちなみに、母の日前には5,000円引きの3,980円で販売されていた。
安価なぶん、ハードウェアの仕様はかなり控えめ。本体はプラスチック製で、重さは約330g。現在主流の極薄タブレットと比べるとかなり分厚いが、手に持った時の安定感はいい。片手で長時間持ってもあまり手が疲れないギリギリの重さというところだろう。
ディスプレイの解像度は1,024×600ドット(171dpi)と、今の水準からは低めになっている。CPUはARMベースの4コア-1.3GHzを搭載。通常の動作で重いと感じることは少ない。フラッシュメモリは8GBと16GBの2モデルあるが、ムービーや写真の保存用としてmicroSDカードを使って増量することも可能だ(ただし、電子書籍はSDカードに保存できない)。その他、スピーカーがモノラル出力(Kindle Fireの上位機種はステレオ対応)だったり、Wi-FiがMIMO非対応でIEEE802.11nまでの対応であるなど、スペック的にはコスト削減の影響が見られるが、実用上はさほど問題ないだろう。ちなみに防水にも非対応だ。
OSはAndroid OSをベースに独自のインタフェースを付加した「Fire OS 5.0」を採用。以前のバージョンとはインタフェースが変わっており、かなりiPadっぽくなっている。
Amazon Prime+Fire=最強の電子コンテンツビューアー
安いが、これといった特徴のないKindle Fireが特別なマシンである理由は、Amazonのコンテンツサービスとの連携が非常に強力な点だ。Amazonは音楽と動画配、それに電子書籍の販売を行っているが、Kindle Fieはこれらのコンテンツへのアクセスが非常に容易なのだ。
配信コンテンツなんて買わないよ、という人でも、Amazon Primeに加入していれば、約100万曲が聴き放題の「Amazon Primeミュージック」と、映画やテレビ番組多数が見放題の「Amazon Primeビデオ」が見放題になる。Amazon Primeは年額3,900円なので、月額に直すと約325円。これで音楽とビデオ両方が利用可能な定額配信サービスは、ほかに存在しない。電子書籍も、Kindle Storeでは毎日のように大幅な値引き販売が行われており、無料での配信も多い。無料の書籍に絞ったとしても、毎月数十冊は利用できるはずだ。
前述のとおり、Kindle Fire自体もPrime会員なら4,000円引きで購入できるので、Amazon Prime3,900円+Kindle Fire4,980円=8,880円で音楽・動画利用し放題+格安の電子書籍環境が手に入るのだ。
Amazonのコンテンツは各プラットフォーム向けにアプリが提供されており、将来プラットフォームを変更する可能性まで考慮しても、ほかのタブレット端末より有利だと言っていいだろう。
弱点はアプリ環境
Kindle Fireでは、Kindleストアで販売されているアプリが利用可能で、メジャーなゲームはある程度用意されているが、海外製が中心で、全体的にアプリ数は少ない。Fire OSはAndroidベースなので、Androidアプリも動作するのだが、そのままではGoogleのPlay Storeアプリをインストールすることができない。ある程度知識のあるユーザーなら回避策もあるのだが、セキュリティが下がったりするので、きちんとした知識と覚悟のないユーザーにはオススメしかねる。結果として、アプリを使うにはあまり向いていないと言わざるをえない状況だ。
Webブラウザは独自の「Silk」を搭載。Amazonの中継サーバー(プロキシサーバー)が画像などを事前に圧縮・キャッシングし、通常よりも高速に読み込めるというのがウリだが、実際に使っている感想としては、正直いってあまりその恩恵を感じることはない。とはいえ、ブラウザとしては概ね希望通りの動作はしてくれる。メールについても同様に、Gmailなどを受信可能なメールアプリが付いており、とりあえず読み書きするのに不自由はない。
繰り返しになるが、Kindle Fireはコンテンツ利用が中心のタブレットであり、タブレット単体として使うのは最低限の機能が想定されている端末なのだ。高度なアプリを快適に動かせる環境が必要であれば、素直にiPadを狙うのが間違いない。
総括: 絶対的なコストパフォーマンスはやはり魅力
Kindle Fireをハードウェアスペック中心に見ると、正直いってウリのない端末だ。ディスプレイもせめてHD(1,280×800ドット)は欲しいし、スピーカーがステレオではないのも、映画視聴時などに残念な感がある。アプリ環境の貧弱さもアプリ中心にタブレットを使いたい人にはマイナスだろう。
だが、利用形態がコンテンツの視聴中心で、まずはタブレットというものを使ってみたい、という用途であれば、iPadを上回る使い勝手を実現できる機種でもある。「Amazon Primeとのセットで」という但し書き付にはなるが、実に侮れないコストパフォーマンスを発揮する。
安いので、多少ラフに使っても気にならない。たとえば半身浴中の時間つぶしに電子書籍や映画などを楽しむにはピッタリだ(もちろん、水没対策は十分に)。またカバー類などの純正オプション類も豊富で、1,880円で水没や落下時にも即時交換してもらえる保証サービスまで付けられる。至れり尽くせりぶりはタブレット全体でもトップクラスだ。もしこれからタブレットデビュー、電子コンテンツデビューを考えているなら、ぜひその選択肢に加えてみてほしい。Fireでは不満を感じるようになってから、iPadなどへの乗り換えを検討すればいいだろう。