肝心の音だが、当然ながらアンバランス接続と4極グランド分離接続では印象が異なる。幸い、ティアックが扱うbeyerdynamicのヘッドホン「T5p 2nd Generation」は、リケーブルによりアンバランス/4極グランド分離の両方に対応できるため、こちらをHA-P5の試聴に使用した。
アンバランス接続時の第一印象は、軽妙かつ重厚。低域にあるベースやスネアドラムは輪郭がぼやけることなく、迅速に収束する。不自然な強調感はなく、肉厚ながらも底にある疾走感が心地いい。分解能にも優れ、中域から高域にかけての伸びやかさがブラスセクションの光沢感に磨きをかける。
S/N感の高さは、初代HA-P50以来続く「技」と言っていい。プッシュプル回路とオペアンプのディスクリート構成は、据置型ヘッドホンアンプ「HA-501」の技術を継承しており、音場の見通しのよさに貢献している。
ケーブルを4極グランド分離の4ピンXLRケーブル「B CABLE T1 2G」に替えると、それらの長所はより鮮明となった。音場はさらにスケールを増し、(そもそもの分解能の高さもあり)個々の音の輪郭がさらにくっきりと描き出される。T5p 2nd Generationのポテンシャルを存分に引き出したければ、リケーブルしない手はないだろう。
送り出し側のデバイスにはMacBook Air(OS X 10.11.4)とRaspberry Pi 3(Volumio 2 RC1)、iPhone 6s(アプリはNePlayer)を利用したが、いずれの環境でもHA-P5が対応するサウンドフォーマットはすべて再生できた。iOSデバイスの場合、Lightning-USBカメラアダプタを使わずにLightningケーブルで直結できるため、ポータブル用途にはもってこいだ。
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MacBook Airと接続。「TEAC HR Audio Player」などのハイレゾ対応ソフトを利用すればDSD 5.6MHzをネイティブ再生できる |
iPhone 6sとLightningケーブルで直結したところ。アプリは「NePlayer」を使用 |
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Raspberry Pi 3(OSはVolumio 2 RC1)でもすんなり認識し、DSD 5.6MHzをネイティブ(DoP)で再生できた |
4極グランド分離の4ピンXLRケーブル「B CABLE T1 2G」をオプションで提供する |
駆け足でHA-P5の特徴をお伝えしたが、4極グランド分離接続というポータブルオーディオのトレンドを踏まえた新機能もさることながら、完全ディスクリート構成のヘッドホンアンプ部、据置型機で実績あるDACの採用など、蓄積されたノウハウが生かされていることが本機のアドバンテージだ。HA-P50やHA-P50SEでは見送られたDSD対応も実現され、ポータブルアンプとしての魅力はいよいよ増している。安心して導入できる1台といえるだろう。