「食の安全」に乗り出した意味

では、なぜメルコホールディングスはこのような異業種へ挑むのか。

現在、メルコグループの売上を牽引するのはやはり周辺機器のバッファローだ。しかし、パソコン市場が停滞。それにともなって、マウスやキーボードなど周辺機器も縮小傾向からは逃れられない。ジリ貧のなか、無理にたくさん安売りしても収益性が悪化するばかり。家電量販店や代理店を通じて商品を展開するビジネスが限界にきている。そう判断したメルコホールディングスが次に期待をかけているのが、連結子会社のひとつ、バッファロー・IT・ソリューションズだ。

左は「2006年~2015年 国内PC市場出荷台数/対前年成長率: 家庭市場/ビジネス市場別」、右は「国内モバイルデバイス市場 出荷台数予測:2015年~2020年」(「モバイル」と銘打っているが、PCにはデスクトップも含まれる)。2015年年間(1月~12月)のPC出荷台数は、前年比31.4%減の1,055万台。2016年以降の予測についても、買い替え需要以外のポジティブな要素は残念ながら見当たらない。出典:IDC Japan

バッファロー・IT・ソリューションズは、個人・法人を対象にネットワークインフラの構築・工事・保守・設定サービスを提供。具体的なサービスとしては、たとえば「アパート Wi-Fi」が挙げられる。大家が回線料金を負担することで、入居者は無料でWi-Fiを使えるというもの。入居者にとって魅力的な物件にするというウリ文句で、空き物件に悩む大家へアプローチしている。今はこのアパート Wi-Fiを大幅に拡大しているところで、4月25日発表の決算短信によれば前年同期比で350%増の導入を実現、累計500棟を達成した。

パソコン周辺機器を主戦場としてきたメルコホールディングス。戦い方の変更を迫られており、ソリューション提案という収益性の高いビジネスへ舵を切りたい。食品業界に目を付けたのも、異物混入がたびたび話題になるうえ、それがメーカーにとって極めて深刻な問題だからだ。

「困っている人のところへ直接アプローチする」というスタイルは先のアパート Wi-Fiと同様。だが、食品業界という異業種で受け入れられるのはハードルが高い。そのために、実証実験という形でまずはエビデンスを作ることにした。