人工知能ボットへの過度な期待よりは……
2016年の1つのトレンドに、人工知能を活用したチャットボットがある。チャットボットは昔からあり、Twitterなどで利用されている自動応答システムがイメージしやすいだろう。そこに人工知能の要素を取り入れたのが、最新のチャットボットだ。
Facebookも、メッセンジャー向けに、より賢いチャットボットに鍛え上げるオプションを用意しており、メッセンジャー内で人間同士の自然なコミュニケーションが可能になることも期待される。
だが、従来のチャットボットは、実用性が低く、人工知能が活用されたところで、チャットボットが本当に役立つのか、と懐疑的に見る人もいるだろう。そのあたりについては、現段階ではまだ評価はしづらいが、筆者はこう考えている。従来型のチャットボット、つまり、単純な定型の会話でも、役立つ場面がたくさんあるのではないかということだ。
今回のフェイスブックの取り組みは、会話インタフェースを、好む人々のために、新たなビジネスの手段を提供したことの方が重要だ。
例えば天気予報アプリであれば、位置情報を送ったらその場所の天気を返す、という簡単なインタラクションで十分機能する。おそらく、天気アプリをインストールしたり、Google検索をするためにブラウザを開くよりも、友人との会話のついでに、ボットに位置情報を送るほうが10秒以上早く目的を達成できる。モバイルの世界で、秒単位の効率化がユーザー体験にとって重要なのだ。
また、前述のコマースの例でも、パターンから外れてしまい機械学習が必要な会話がすぐに必要だとは思わない。自社で揃えている商品のカテゴリ、サブカテゴリ、価格帯を選んでもらえば、おすすめの商品を提示できる。もし特定の商品が欲しければ、そのキーワードを話しかけて貰えば、検索結果を返せば良い。
まず重要なことは、人工知能以前の話だ。つまり、顧客が、自分たちのビジネスに何を期待し、どのような手順を用意すれば良いか。これを考えて、シンプルな会話のパターンに落とし込むことが重要なのだ。パターンから外れることは、今まで通り、実際の人が対応すれば良い。その経験を通じて、パターンを増やしていけばよいのだ。
このように考えると、メッセンジャーにおけるチャットボットの活用法は、数多くある。人工知能の活用したチャットボットの評価が高ければ、さらに大きな飛躍も期待される。Facebookのチャットボットを通じた新しいインタフェース。その今後に注目していきたいところだ。
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