実際、2016年には北海道の厚岸や静岡などで新たな蒸溜所が稼働する予定。肥土さんもそうした新規参入の“起業者”たちに、助言を求められればアドバイスを与え、研修の受け入れも行っている。起業という言葉とウイスキーはなかなか結びつかない印象があったが、静かに、そして着実に、時代は動き始めている。

地ウイスキーブームを牽引

クラフトウイスキーブームの先陣に立ってやろうという意識はあるかと少々仕掛けてみると、肥土さんはなんの衒いもなく「そうですね。ライバルが出てきて困るというより、もっと出てきてほしい。ビールや日本酒に比べてウイスキーメーカーは日本に少なすぎますから。そのためにも、うちがウイスキーをつくり続け、ビジネスになるんだというところを見せなければいけませんね」。こだわりの姿勢も忘れない。自前の樽工場が稼働し、将来的に樽の外販も考えているという。

ベンチャーウイスキーの売上高は、2015年3月期が前期比ほぼ1億円増の3億8000万円。2016年3月期では20%増を見込んでいる。右肩上がりで順調に伸びているが、「ウイスキーは熟成が必要なので、出荷できる量にも限りがあります」。

品質の高さで世界から評価され、新顔ながら国内で、海外で、着実にファンを増やしているベンチャーウイスキー。売り上げを伸ばしながらも在庫を充実させていく現在・未来両睨みのウイスキービジネスが、これからのクラフトウイスキーの、ひいてはジャパニーズ・ウイスキーを引っ張るだろう。

原料となる麦。イギリスやドイツから輸入している。地元、埼玉の麦を使うこともある

栓はすべて木製

日本お酒市場の新潮流

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