米AT&Tが複数のデバイスで1つの電話番号を共有できる「NumberSync」サービスを発表して話題になっている。例えばスマートフォンで使っているメインの電話番号を同サービスの対象とした場合、それ以外のタブレットやウェアラブルデバイスでも同番号への音声発着信やSMS送受信が利用可能になり、デバイスごとに異なる番号を用意する必要がないというメリットがある。米大手携帯キャリアではAT&Tのほか、SprintやT-Mobileもサービス導入に意欲を見せており、メジャーなサービスの1つとなりそうだ。

AT&Tは自社ウェブサイトでNumberSyncについて公表

NumberSyncについての詳細はAT&TのBlogで紹介されている。それによれば、メインとなる電話番号があり、NumberSyncに対応したデバイス(この場合はタブレットやウェアラブル)の紐付けを行うことで、スマートフォンが手元で動作していなかったり、あるいはBluetoothペアリングが解除された状態であっても、紐付けたデバイスが手元にさえあれば、音声発着信やSMS送受信など電話番号を必要とするサービスをそのままメインの電話番号で利用可能になるというものだ。紐付けそのものはAT&Tのバックエンドシステム上で行われているため、デバイス間の特別な接続や設定は必要ない。実質的に1つの電話番号を複数の所持デバイスで共有可能となっている。

これにより、例えばスマートウォッチのみを身に付けて外出していても、ペアリングなしの状態で、本来はスマートフォンで利用している音声通話やSMS送受信がそのまま利用可能になる。対応デバイスは今月末までに発表されるほか、今後も対応デバイスを順次拡充していく方針だという。なお、NumberSync自体はAT&Tの基本サービスとして提供されるようで、対応デバイスさえ手元にあれば無料で利用可能なようだ。

この説明だけだといろいろ疑問符が沸いてくる内容だが、The Vergeの報道を眺めるとそのからくりが少し見えてくる。NumberSyncはAT&TのVoLTEインフラを利用したサービスで、この仕組みをそのまま流用することで実現しているという。VoLTE (Voice over LTE)は、LTEのIPインフラを使って音声通話を可能にする仕組みで、従来の回線交換とは異なるインターネット的なIPインフラとなっている。

おそらくは、1つの電話番号に対して複数のデバイス固有のIDを結びつけることで、"AT&Tの"LTEネットワークに存在するデバイス同士であれば、NumberSyncの仕組みを用いて1つの電話番号を共有できるようになっているとみられる。そのため、利用条件としては「LTE接続が可能なデバイス」「少なくともAT&Tから認識できる形で存在していること」の2つが挙げられると考えられる。LTE以外のAT&T Wi-Fiホットスポットや、ローミング時の動作については、今後の追加情報が必要だ。

なお、Re/codeのIna Fried氏によれば、T-Mobile USAのCOOであるMike Sievert氏が、AT&TのNumberSyncよりも優れたサービスを用意すると表明したという。このほか、Sprintも同様のサービス提供を示唆しており、実装としてはAT&T固有のものではなく、LTEネットワークを展開する各社であれば十分実現可能な仕組みであると考えられる。AT&Tからの続報を待ちつつ、日本を含む海外の携帯キャリアの動向に注目したい。