メリットはデメリットにも

反面、こうしたシンプルさはデメリットにもなりうる。キャリアやメーカーは、画一的になりがちなスマートフォンに対して、独自のアプリやサービス、機能を搭載することで差別化を図っている。日本固有のおサイフケータイ、ワンセグ、ケータイメールといった機能もそうだし、防水防塵や、そのメーカーの端末でしか使えないオリジナルアプリといったものも、差別化の一環だろう。

日本のキャリアであれば、各地にあるショップでサポートしてくれたり、新しい通信方式による高速通信サービスが利用できたり、端末と通信の検証が行われているため、安心して利用できるといったメリットもある。

もともと、NexusシリーズはOSの検証などを目的とした開発機的な位置づけで、万人に向けた製品ではなかった。Google自身もハードウェアが事業の中心ではないため、Appleほどのサポート拠点も構築できておらず、購入後のサポートにも不安が残る。

最新OSのアップデートに関しても、万人にとって必要とは限らない。特に早期にアップデートすると、使えないアプリやサービスが出てくる可能性もあり、アップデートによって不具合が発生することもあり、いち早く提供することだけが正しいわけでもない。

カスタマイズの自由度が高いAndroidであるため、メーカーやキャリアが独自機能を追加する過程で、OSのバージョンアップに追従できない場合も出てきているが、AndroidもOSとして安定してきており、バージョンアップによる速度低下や操作性の変化などのデメリットを考えて、アップデートを提供しない、という考え方もありうるだろう。セキュリティに関しても、キャリアによってはNexusほどではないにしろSamsungのようなグローバルメーカーを中心にアップデートによるパッチの適用が行われており、致命的な部分だけアップデートするのも一つの考え方ではあると思う。

ただ、すべての人がカスタマイズされたすべての機能を必要としているわけではなく、特にキャリアは2年縛りを前提とした料金プランを提供している以上、その間のアップデートは極力実施することが望まれるだろう。「OSのアップデートは特別なサービス」といった意識がキャリアやメーカーには見え隠れするが、スマートフォンを含むスマートデバイスでは、アップデートを前提とした開発を想定すべきだろう。現時点でも、セキュリティアップデートすら放置するのは責任の放棄と言ってもいい。