消費電力&動作周波数(グラフ72~76)

最後に消費電力、それと冒頭でもちょっと触れたR9 Nanoの動作周波数をちょっと確認してみたいと思う。

今回テストには2つのテストを利用した。1つは従来と同じく3DMarkのFireStrikeのDemo画面、もう1つはDirectX 12のテストということでUnreal Engine 4.9を利用したElemental DX12 Tech Demoである。こちらはGuru 3Dからダウンロード可能だ。

もっともこのDirectX 12のサポートはリリースノートにもあるように、あくまでExperimental Supportという扱いである。それもあって、このデモを実行すると一応リアルタイムでフレームレートが表示されるものの、それを記録する方法が用意されていない(もちろんDirectX 12なのでFRAPSも使えない)。そのため、ベンチマークとしての利用はあきらめた。

ちなみに測定方法だが、これをダウンロードして展開すると、"DX12 & NO VSYNC"というショートカットが用意されるので、これをクリックして起動すると勝手にオープニングムービーが160秒ほど始まり、その後Unrealロゴをしばらく表示してからユーザー操作画面に切り替わる。この起動~ロゴ表示までの間の消費電力を測定した。

ということで本題。グラフ72が3DMark FireStrike Demo、グラフ73がElemental DX12 Tech Demoの稼働中の消費電力である。平均してR9 NanoがGTX970よりも40Wほど消費電力が高い事が分かる。

この数字をまとめたのがグラフ74である。

Idle、つまり何も動かしていない待機状態における消費電力は62.5W/63.1Wとほぼ同等である(絶対的に消費電力が高いのは、Core i7-6700Kという消費電力の大きなCPUを、ASUS Z170A-Deluxeというこれまたオンボードデバイスが多いマザーボードと組み合わせているためである)。なので差を取ってみると

GTX970 R9 Nano
FireStrike 154.3W 191.7W
Elemental 152.6W 186.9W

ということになる。R9 NanoのTBPの175Wよりはやや多いが、実際にはCPUもフル稼働していることを考えると、ボード単体で見れば175W以内に収まっているのは間違い無い。

むしろOC版にも関わらず増分が150W程度で、実際にはボード単体では150W未満に収まっているGTX970が優秀というべきなのかもしれないが、このあたりは性能とのバランスなので、一概にR9 Nanoが劣っているとも言いがたい。

取りあえず言える事は、R9 Nanoはほぼフル稼働状態(3DMark FireStrike Demoの終わり頃とか、Elemental DX12 Demoの途中)でも静かであった。なにしろ、CPU用の水冷キットのラジエータに付属する120mmファンの方がうるさいという始末だった。

ついでにもう一つ、動作周波数について。こちらはGPU-ZのSensor機能(Photo32)を使い、GPUコアの動作周波数を同じように記録した。

Photo32:ここで"Log to file"にチェックを入れ、ファイル名を指定すると後はずっと記録される。ちなみにSensor refresh rateは最小0.1秒で指定可能だが、実際は最小でも0.12~0.13秒程度の間隔となった

グラフ75が3DMark FireStrike Demo、グラフ76がElemental DX12 Tech Demoの稼働中の動作周波数変動であるが、GTX970は比較的荒い変化を示している。ただ、消費電力/発熱的にゆとりがあるのか一度稼動すると常に1200MHz以上で動作しているのに対し、R9 Nanoは時折1GHzに達するものの、ほとんどの状態で900MHz以下で稼動している。

また周波数の変動が非常に煩雑(グラフ75で105秒以降でこれが顕著)なのが分かる。恐らく早いタイミングで熱的に苦しくなり、あとは750MHz~900MHz程度の間を小刻みに変化させながら限界を超えない範囲で利用していると思われる。

これだけみると、もう少し定格動作周波数を落としても良かったのではないかという気もするが、この小さなヒートシンクでも900MHzあたりをなんとか維持できる事が逆にすごいとも言えるかもしれない。