パラレルスは19日、Mac上でWindowsやLinuxなどのゲストOSを実行できる「Parallels Desktop」の最新版となる「Parallels Desktop 11 for Mac」の販売を開始した。それにあわせ、都内で発表会が開催され、製品の概要などが説明された。

パラレルス マーケティング部長の日下部徳彦氏

発表会は、同社のマーケティング部長である日下部徳彦氏の挨拶からスタート。続いて代表取締役の下村慶一氏が登壇し、同社のビジネスアップデートと、今回発表となった「Parallels Desktop 11 for Mac」の製品概要を紹介した。

パラレルス 代表取締役の下村慶一氏。発表会当日は自身の誕生日だったという

「Parallels Desktop 11 for Mac」では、MacとWindowsの長所を活かし、これまで以上に簡単な操作環境を提供し、パフォーマンスの向上が図られている。先頃Microsoftが提供を開始したWindows 10への対応はもちろん、パブリックベータ版が公開されている次期Mac OS「El Capitan」のサポートも謳われている。

前述のパフォーマンスの面では、Windowsの起動とシャットダウンのスピードが最大50%高速化し、Windows内のファイルを操作する際に最大20%速度が向上、仮想マシンを中断するまでの時間も最大20%高速化している。さらに新機能である「Travel Mode(トラベル モード)」の搭載で、外出時のバッテリー持続時間が最大25%伸張している。

米Parallels シニアプロダクトマネージャーのカート・マッカーシー氏

米Parallelsのシニアプロダクトマネージャーであるカート・マッカーシー氏のデモでは、まずMac OSのクイックルック機能をWindowsに拡張した「Quick Look for Windows」が披露され、新しいCoherenceモードへの切り替えボタン、DockからのWindowsで最近使った項目の表示などが紹介されたが、今回の目玉は何と言ってもWindowsとOS X両方の環境でWindows 10に搭載されたパーソナルアシスタント機能「Cortana」が利用可能となったことだろう。Parallels DesktopがWindowsの機能をOS Xアプリケーションで利用可能にしたのは今回が初とのことで、Cortanaのデモでは、WindowsアプリでOS Xから位置データを取得(これも新機能)してみたり、「Pages」などのMac用アプリを起動するといった機能を見ることができた。日本語での利用はもう少し先になるとのことだが、現状Mac OSではiOSで提供されている音声アシスト機能「Siri」が使えないので、かなり刺激的なデモンストレーションだったと言えよう。さらに日本語版のみの機能として日本語キーボードの操作性が向上が図られている。OS X El Capitanでは日本語入力のライブ変換機能が搭載されることになっているので、これも大いに期待が寄せられる性能向上と言えるだろう。OS X El Capitanでは、正式リリースに先駆けて同OSに対応する試験的なサポートを提供しているが、El Capitanの公開後はプラットフォームをフルサポートする予定だ。

CortanaからPagesを起動するデモ

また、本バージョンより、一般ユーザー向けの「Parallels Desktop 11 for Mac」と、前バージョンで登場した「Parallels Desktop for Mac Enterprise Edition」を改称した「Parallels Desktop for Mac Business Edition」、新たに加わった「Parallels Desktop for Mac Pro Edition」という3ラインでの展開となることもアナウンスされた。

「Parallels Desktop for Mac Pro Edition」は、開発者、デザイナーといったパワーユーザー向けに設計されており、DockerやVisual Studio(プラグイン)、Chef、Jenkins、Vagrantなどの開発者用ツールとの統合、ゲストOSでのデバッギング、ネットワークシミュレーション機能に対応している。

名称が変更された「Parallels Desktop for Mac Business Edition」は「Pro Edition」の全機能に加え、企業のIT部門担当向けにエンドユーザーの仮想マシンを制御すると同時に、新しい「Parallels License Management Portal」を使用してライセンスを運用できる一元管理機能を搭載している。

Parallels Desktop for Mac Pro Editionのデモ。Visual Studioとの統合環境などが紹介された

Pro Editionでのデモでは、UIを使わずコマンドラインだけで操作したり、Visual Studioとの統合の解説などが行われた。その中では、ひとつのOSの中で別なOSのデバッグを行える、不安定な環境下で、ある仮想マシンがクラッシュしてもコード自体は別な場所にあるから安心して使用できる、ネットワークの帯域のテストも設定を自由に変えられるといった利便性が強調された。

再登壇した下村氏は、開発者やWebのディレクターの多くが、いかに仮想化環境を使っているか知っていただけたと思うと述べ、こういった製品群の提供を行う意味や理由も理解していただければとParallels Desktopの魅力を伝え、発表会を締めくくった。