消費電力測定(グラフ82~93)
グラフ82と83がSandraのDhrystone/Whetstoneを実施し、その消費電力変動を示したもので、それぞれの待機状態の実効消費電力をまとめたのがグラフ84と85だ。
一見するとSkylakeの消費電力が結構大きいのだが、そもそもマザーボードがHaswell/Broadwellと異なるので、当然ながらベースとなるCPU以外の消費電力がそもそも同じではない。したがって、グラフ82~85の絶対的な数字を見てSkylakeの消費電力が大きい、と判断するのは早計である。
ということで待機時の消費電力との差をグラフ86に示すが、そうは言ってもやはりSkylakeは微妙に消費電力が多めの傾向にあることは間違いないようだ。ただDhrystoneに関しては、その分性能も改善している訳で、これを勘案するとHaswellと性能/消費電力比は大きく変わらない様に見える。
一方グラフ87と88は3DMarkのFireStrikeのDemoを実施中の結果である。この平均をとってまとめたのがグラフ89であるが、やはりHaswellよりは全体的に消費電力が増え気味で、外部GPUの場合で20Wほど、内蔵GPUの場合でも15Wほど上乗せになっている。
3つ目が動作周波数と消費電力増分の関係である。グラフ90と91はBroadwellのレポートと同じものであるが、今回はここにSkylakeの結果(グラフ92)も追加した。一見して、動作周波数の低いところは殆ど差がなく、グラフも非常に詰まった間隔になっているが、動作周波数が上がると急激に間隔が広がってゆく傾向はHaswellにかなり近い。
この平均値をそのままプロットしてついでに近似値を算出したのがグラフ93である、これだけ見るとSkylakeが異様に消費電力が大きいように思われるが、近似値を見ていただくと分かる通りそもそもベースとなる0GHz相当での消費電力が異なっている。
このあたりはマザーボードが同じ関係で、0GHz相当の消費電力がほぼ同じHaswell/Broadwellとは話が異なる。直線近似の値は
- Haswell Y軸切片:43.054W 傾き:20.074W/GHz
- Broadwell Y軸切片:44.374W 傾き:14.072W/GHz
- Skylake Y軸切片:67.207W 傾き:13.945W/GHz
となっており、ここで24Wほどの差がある。そこで、0GHzの時に消費電力が0Wとなるようにプロットし直したのがグラフ94である。面白い事に、3GHzあたりまではほぼBroadwellと増加傾向が同じなのだが、Broadwellはその先で急激に消費電力を増やしているのに対し、Skylakeは比較的同じカーブを描きつつ4GHzあたりまで破綻なく推移していることだ。
この結果を見ると、改めてSkylakeが14nmプロセスを利用して製造されていること、ただしBroadwellのP1272とは異なり、より高い動作周波数まで引っ張れる傾向にあることが見て取れる。
ただしこれをもってSkylakeが新しいプロセス(P1273)を使っているかどうかは断言できない。というのは、Broadwellが3.6GHzで破綻している理由がプロセスではなくeDRAMが持たない、という可能性もあるからだ。確認のためにはeDRAMを無効化、あるいはeDRAMを持たないBroadwellを持ってきて比較するしかないが、今回はそこまでの作業は間に合わなかった。
取りあえず、SkylakeはHaswellに比べると省電力を実現できている可能性があるとして良いだろう。なんで「可能性がある」と奥歯にモノが挟まったような言い方になるかというと、グラフ94ではSkylakeの消費電力を、Haswell/Broadwellと比べて24Wほど余分に引き算したのだが、グラフ89ではお分かりの通りHaswellとSkylakeで待機中の消費電力の差は10W未満でしかない。
24Wも引いていいのか、というあたりが議論の残るところであるが、これを検証するためには別の構成のハードウェアが必要になる。そんな訳で今回は前述の「可能性がある」レベルで結論をとどめておきたいと思う。