米NVIDIAは、1月初週からラスベガスで開催されていたCES 2025にあわせて基調講演を開催し、2022年以来となるアーキテクチャを刷新した新モデル「NVIDIA GeForce RTX 50」シリーズを発表しました。ラスベガス現地では技術的な詳細について解説するEditor's Dayが開催され、基調講演のような場では細部まで言及していられない具体的な進化について知ることができました。

  • 「NVIDIA DLSS 4」はGeForce RTX 50“以前でも”効く、超解像はCNNモデルからTransformerモデルへ

今回、マイナビニュースもNVIDIAの招待で基調講演・Editor's Dayに参加してきました。この記事では難しすぎる技術的な内容はいったん横においておきまして、筆者のようないちゲーマーに大きな影響を与えるであろう最新機能「DLSS 4」について見ていこうと思います。

取材協力:NVIDIA

大刷新されたDLSS 4、旧モデルでも得られる恩恵

現行最新バージョンとして提供されている「NVIDIA DLSS 3.x」において、全く新しい「DLSS 4」が発表されたのは既報の通り。フレーム生成機能はシェーダーコアで本当にレンダリングしたフレームの間と間に挟んでフレームレートを引き上げるどころか、推論性能の向上で複数のフレームを生成できるように進化しました。RTX 50シリーズではこの多すぎるフレームを適切に間引いて表示させられる機能を新しく内蔵したことで、最新のフレーム生成機能をサポートしています。これが第一の目玉アップデート。

  • フレーム生成機能はもはや複数のフレームを推論性能だけで生成できるようになりました

  • ただ、適切に間引いて並べないと映像出力が破綻してしまいます。この機能がBlackwellにしかないため、RTX 40シリーズでは使えません(RTX 40シリーズでもマルチフレーム生成自体はできるらしい)

  • 当然フレームレートは爆増。かなり滑らかな画面表示でゲームプレイを楽しめます

第二の目玉アップデートは、DLSS機能の中でも最もメジャーな超解像機能におけるもの。これまでもTensorコアを用いたDLSSアップスケーリングではAIの力が用いられており、シェーダーコアのパワーを節約しつつ性能を上げてきました。このアップスケーリングのAIがCNNモデル(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)から、Transformerモデルへと刷新された点です。

  • NVIDIA DLSSがTransformerモデルへと大刷新

  • より忠実度の高い描画へ

  • Ray Reconstructionの強化で細部の描写が鮮明になったと話します

だいぶ技術的に踏み込んだ内容なので、関心があればNVIDIA公式ブログの解説『Transformer モデルとは?』を読むなどすれば理解を深められるはずですが、超ざっくり説明してしまうと、CNNモデルは黎明期に発達した画像認識等で有力だったモデル。

一方、Transformerモデルは自然言語処理等を得意としているモデルで、高速な並列処理と入力データの形式に依存しないという特徴があります。大規模言語モデルから音声認識、創薬、タンパク質の構造予測にまでTransformerモデルは活用されており、今回DLSSのモデルにも導入されるようになったというわけ。要するに画像処理関連のAI処理としてこれまでCNNモデルを使ってきたところ、昨今流行りのTransformerモデルにリプレースされたと認識しておけばよいでしょう。

とてもありがたいことに、このNVIDIA DLSS 4(Transformerモデル)はNVIDIA GeForce RTX 50シリーズだけではなく、NVIDIA DLSS機能に対応するRTX 20~RTX 50のすべてで利用可能。対応するタイトルでは最新RTX 50シリーズでなくても、高品質・高性能な最新NVIDIA DLSSのアップスケーリングを体験できます。

さらに、なんとゲーム側で最新NVIDIA DLSSに対応していなくてもドライバ側で最新バージョンを勝手に適用できる「NVIDIA DLSS Overrides in NVIDIA App」もアナウンスされました。GeForce Experienceに代わって展開されている「NVIDIA App」から利用できる機能で、ドライバ側からDLSS設定を書き換えて最新バージョンを適用可能。アップスケーリング、フレーム生成、アンチエイリアス(DLAA)の項目をNVIDIA App側から変更できます。お気に入りのゲームがなかなか最新DLSSに対応してくれなくても、自分で最新NVIDIA DLSSを有効化できてしまいます。

  • 「NVIDIA DLSS Overrides in NVIDIA App」。ゲームで対応してなくても問題なし!

ちなみに質疑応答では、「ドライバ側で勝手に設定を変更しているが、アンチチートに検出されたり、利用規約に違反することにならないのか」と質問も。「ゲーム開発者と密接なコミュニケーションを図っており、そうならないよう努力している」との回答がありました。2024年には、業界で低遅延機能が自動的に有効化されたために競技ゲームタイトルでアカウントが一時ロックされる事案もあり、NVIDIA AppでのOverride機能の展開にも万全を期してほしいところです。

最後に、NVIDIA DLSS 4が内包する各機能と互換性についてチェックしておきましょう。ひと口に「NVIDIA DLSS 4」といっても「マルチフレーム生成」「フレーム生成」「DLSS Ray Reconstruction」「DLSS 超解像機能(ベータ)」「DLAA(ベータ)」が内包されており、なかなか超解像機能に限らない豊富な機能セットになってきました。ずばり表現した表がNVIDIA側から提供されています。

  • これまであった機能も全面的に強化され、旧モデルでも使える嬉しいアップデートになりそう