どう使われているのか

基本的に、ワトソンの機能は「データを与えて学習させ、質問を投げかけるとデータから答えを類推して回答を導き出す」ことだ。質問の入力として自然言語を認識でき、データソースとしてはテキストだけでなく、画像や音声、動画、MRIやレントゲンからの入力なども加えられているという。

ワトソンでは莫大なデータを人間では不可能な速度で解析し、最適な対応を導き出せるため、たとえば投資分野においては、アナリストなどから毎日発行される数千以上ものレポートを検証し、次に投資するべきターゲットの候補をピックアップする、といったことも実現できる。

もっとも、これだけであれば、ちょっと気の利いた検索機能と大差ないように思えるが、ワトソンでは莫大なデータから、ワトソン自体が類推して「発見」または「発明」と呼べるような新しい回答を導き出せる点が異なる。現象としては、人間がふとしたことから思いつく「発想」に近い。

たとえばその一例として、料理誌「ボナペティ」と共同で、ワトソンに化学や文化、食品に含まれる成分などの情報を与えることで、新しいレシピを考案する「シェフ・ワトソンwithボナペティ」という試みが行われ、実際にまったく新しいレシピも考案された。これは、単なる検索ではできない機能だ。

「Chef Watson」では素材や料理の種類を指定するとレシピを提案してくれる

また、医療分野ではiPhoneで肌を撮影した画像をワトソンが解析・学習し、メラノーマ(悪性黒色腫)とそうでない皮膚を見分けるシステムが構築されている。診断率が高くなれば、医療機関に通わなくても自己診断が可能になるし、専門家でなくとも早期に異常を発見して治療に結びつけることもできるようになるわけだ。

また、現在は教育分野においてもコグニティブ・コンピューティングを役立てようと開発が進められているという。特定の問題をかかえる生徒に対し、教師が対応するためのアシスタント的な役割を果たすという。

米国ではワトソンを使った「CogniToys」というおもちゃが登場している。このワニのおもちゃに話しかけると、無線経由でインターネットに接続し、ワトソンがバックボーンで処理をして子供からの質問に答える。子供の年齢や好みを理解して会話のレベルを変えることもできる。

「Cognitoys」はKickstarterで資金調達を達成し、現在製品化に向けて開発中。こういったコグニティブ・トイの応用としては、子どもの受け答えから悩みや問題を見つけたり、特定の発達障害などを発見することもできるだろう

また、ワトソンをソフトバンクの「Pepper」のバックボーンとして動作させるデモでは、ヤマダ電機の店員として、客と4Kテレビの商談を自然な日本語で行う様子が公開された。ロボット店員というのもまるでSFのような話だが、すでに実現まであと一歩というところまで来ているようだ。

応対のやりとりそのものはかなり「作り」が入ったものだったが、質問に対する回答の時間も短く、すでにかなりの完成度に達していることが伺えた