追い打ちをかけるiOS 9の「Wallet」アプリ

Apple Payを採用したチェーンが増えた背景には、秋にリリースされるiOS 9の新機能も少なからず影響している。

Appleは、Apple Payに登録したカードやQRコードのパスを格納しておくアプリ「Passbook」を刷新し、「Wallet」と名称を改めた。Walletには、財布の厚みをさらに減らし、小売店にとっては顧客のロイヤリティを高める効果がある機能が用意されている。

店舗が発行するクレジットカードもサポートすることで、通常の手数料がかからずに、店頭決済が行えるようになり、顧客はわざわざカードを持ち歩かなくても、商品を購入できるようになる。

iOS 9でPassbookは「Wallet」と名前を変え、チェーンが発行するクレジットカードやポイントカードなどをApple Payの決済時に利用することができるようになる

また、ポイントカードもApple Payでサポートし、これまでのApple Payでの決済と同様に、決済端末にかざすだけでカード決済とポイントの付与を受けることができる。店舗側は顧客の購買情報を集めて特典を返すことができ、顧客もポイントカードを財布から減らすことが可能となる。

こうした新機能によりApple Payは、単なるモバイル決済から、チェーン店が顧客に対するサービスを行うプラットホームへと進化することになる。これは、顧客にとって様々なチェーンで特典を受けながらも、財布の厚みを増やさなくて良い、あるいは財布を取り出さなくても良いという場面が増えていくことを意味する。

iOS 9のWalletとApple Payの利便性向上は、GoogleやSamsungなどがAndroidデバイスで参入したモバイル決済の競争力を高め、前述のMCX陣営の切り崩しにも有効に働いていくことになるだろう。

ただし、MCXより優位になることと、顧客が便利になることはイコールではない。大規模な小売店チェーンとは無縁の、しかし日々の買い物で利用する小さな店舗でApple Payが利用できる見込みは、ここまでの話だけでは立たないからだ。