「WWDC15」の基調講演で、同じスライドが2度表示された。それはグレーの背景に白い手の平がこちらに向けられているアイコンが用いられた「プライバシー」のスライドだ。Appleはプライバシーを、iOS 9をはじめとするあらゆるサービスやソフトウェアにおける、差別化要因にしようとしている。

プライバシーに対するAppleの考え方

Appleは、クラウドにある、あなたのことを知るためのメールや写真、連絡先の情報に関知しない。正直なところ、知りたくないのだ――。

基調講演に立ったAppleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、Craig Federighiはこう述べた。そして、「すべてはあなたの管理下にある」(同氏)と。

Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、Craig Federighi氏は、WWDC15の基調講演に置いて、Siriの機能向上、Newsアプリの記事推奨機能の紹介の2度、プライバシーに関するスライドを表示した

Appleはデータを収集しないだけに留まらない。もし、Siriが先回りしてウェブ検索などを行って情報を取得する場合、匿名でのウェブ利用を行うこと、またApple IDとこうしたデータを紐付けないことなどが謳われている。

iOS 9の主要な進化となるSiriの機能向上。ユーザー行動を学習し、先回りして情報やアプリを提案したり、ユーザーの作業を軽減してくれる役割を果たす。ここでも、ユーザー間の情報共有や、サードパーティーへの学習情報の共有は行われない

また、Appleやサードパーティーが、そのアプリの情報を他のアプリで活用することはないとしている。サードパーティーの開発者に検索APIが提供され、SiriやSpotlightから検索できるようになるが、ユーザーの意向に沿わないデータの活用は行われないということだ。

Appleがプライバシーについて強調しているのはこれが始めてではない。捜査当局を困惑させるほどのiMessageやFaceTimeのプライバシーの強固さや、Touch IDの指紋データを送信しないといった既存のサービスでの考え方と同じだ。

それにも関わらず、Appleが改めてこのことを強調しているのは、iOS 9で、より積極的にユーザーをアシストするため、iPhone内にあるユーザーの情報をより積極的に活用しようと考えているからだ。