実効速度はどれくらい出る?
有線・無線を問わず、コンピュータのインターフェースはどれも理論上・規格上の速度と、実際の通信速度(実効速度)に大きな差がある。これは単純にデータを通すためのパイプの設計としての数値と比べ、実際にデータを流すときにはエラー訂正等の仕組みが入ったり、ノイズ等の影響があるためだが、無線規格の場合、概ね実効速度は理想的な環境で規格値の半分程度、条件が悪ければ10分の1以下になることもザラだ。
いくら11acが利用効率や接続環境を改善するといっても、ルーターと同じ部屋にクライアントがある場合で数百Mbps、違う部屋なら100Mbps台、階が変われば数十Mbpsまで落ちることも覚悟しておこう。
また、スマートフォンで利用する場合、フラッシュメモリ等の速度がボトルネックになり、そこまで大きな速度改善を感じられないこともある。ベンチマークアプリで計測すると高い数値が表示されるが、これはベンチマークアプリで扱うデータが小さく、高速なメモリ上で処理できてしまうため。大きめのデータをフラッシュメモリに書き込む際は、どうしても速度が遅くなる。
また、インターネットに接続する回線もボトルネックになる。無線LANの速度は、あくまでルーターと子機の間での話。ルーターから先の回線が遅ければ、インターネット接続の最大値はその回線の速度が上限になる。11acの速度を完全に生かすのであれば、1Gbps以上の光回線を使うのが理想的だ。
とはいえ、やはり無線側が早くなれば全体的なパフォーマンスは上がるので、まったく無意味というわけではない。これまでの無線LANでは繋がりにくかった環境でも繋がりやすく、パフォーマンスを出せるようにしているのが11acなので、少なくとも11n環境と同等以上の速度が望めるはずだ。
今回はIEEE 802.11acの概要について説明したが、次回は11acを構成する技術要素について、もう少し詳しく見ていこう。11acでは製品ごとにサポートする機能の範囲が異なり、製品選びの際の要チェックポイントなのだ。
(記事提供: AndroWire編集部)