ご存じの通り、Intelは世界最大の半導体メーカーであり、CoreプロセッサやAtomなど、PC用CPUでは世界トップシェアを誇っているほか、NANDフラッシュメモリの製造でも世界有数の規模を有している。

Intelは、自社製NANDフラッシュメモリを採用したSSDも製造しているが、Intel製SSDは、SATA対応のコンシューマ向け製品からPCI Express対応のエンタープライズ向け製品やサーバー向け製品まで幅広いラインナップをそろえ、「Intelブランド」の名に恥じない高い性能と信頼性で人気がある。

米国時間2日にIntelから登場した最新SSD「Intel SSD 750」は、従来製品であるIntel SSD 730の後継モデルという位置付けで、コンシューマ向けSSDとして最上位モデルとなる。接続インターフェースとして、従来モデルではSATA 3.0対応だったのだが、「Intel SSD 750」では、PCI Expressを採用していることが大きな特徴だ。

PCI Express採用の背景としてあるのが転送速度だ。SATA 3.0の最大転送速度は600MB/sであり、高速化が進むSSDのインターフェースとしては性能不足となってきている。そこで、Intel SSD 750は、グラフィックスカードなどのインターフェースとして広く利用されているPCI Expressに対応することで、SATA 3.0のボトルネックを解消する狙いがある。

PCI Express対応SSDは、Intelをはじめ他社からもいくつかの製品が登場しているが、Intel SSD 750は単に物理層としてのPCI Expressに対応しているだけでなく、AHCIの後継となるSSD専用の転送プロトコルであるNVM Express 1.0(NVMe 1.0)に対応していることがウリだ。

AHCIは、基本的にHDDのためのプロトコルであり、SSDに最適化されているわけではない。一方のNVMe 1.0は、キューに発行できるコマンドの数が32から64,000に拡張されているなどの強化が行われているため、SSDの性能を最大限に発揮することが可能だ。Intelのコンシューマ向けSSDで、NVMe 1.0に対応した製品は、このIntel SSD 750が初となるという。

PCI Express拡張カードタイプと2.5インチ15mm厚の2種類のフォームファクターを用意

Intel SSD 750は、ハーフハイトハーフレングス(HHHL)のPCI Express拡張カードタイプと、2.5インチ15mm厚の2種類のフォームファクターが用意されている。後者は、SFF-8639と呼ばれるコネクタ仕様に対応しており、従来のSATAコネクタとは互換性がない。容量は400GBと1.2TBの2モデルが用意されている。今回は、PCI Express拡張カードタイプのIntel SSD 750の1.2TBモデルを入手できたので、こちらでテストを行う。

PCI Express拡張カードタイプのIntel SSD 750。ハーフハイトハーフレングス仕様である

PCI Express拡張カードタイプのIntel SSD 750の裏面。NANDフラッシュメモリやDRAMが見える

NANDフラッシュ部分を拡大

標準ではハーフハイトのブラケットが装着されているが、フルハイト用のブラケットも付属している

Intel SSD 750は、PCI Express 3.0 x4での接続に対応しており、性能を最大限に発揮するためには、PCI Express 3.0を利用する必要がある。

Intelのチップセットでは、Intel 7シリーズ以降で、PCI Express 3.0に対応しているのだが(Intel 7シリーズのPCI Express 3.0対応はIvy Bridge以降のCPUと組み合わせた場合のみ)、システム的な要件としては、最新のIntel Z97 ExpressまたはIntel X99 Expressの利用が推奨されている。

ここでは、機材の都合上、Intel Z77搭載マザーボードで検証を行ったが、CPUはIvy Bridgeであり、PCI Express 3.0には対応している環境である。

1.2TBモデルの公称シーケンシャルリード速度は最大2400MB/s

まず、公称スペックを見ていこう。Intel SSD 750は、400GBモデルと1.2TBモデルでは多少性能が異なり、シーケンシャルリード速度は、400GBモデルが最大2200MB/s、1.2TBモデルが最大2400MB/sとなっている。

SATA 3.0対応SSDでは、ハイエンド製品でも540~550MB/s程度であることを考えると、まさに驚異的な速度だ。シーケンシャルライト速度は、400GBモデルが最大900MB/s、1.2TBモデルが最大1200MB/sであり、こちらもシーケンシャルリードほどではないが、SATA 3.0対応SSDのハイエンド製品と比べて2倍以上高速である。

また、4KBランダムリードは、400GBモデルが430,000IOPS、1.2TBモデルが440,000IOPS、4KBランダムライトは、400GBモデルが230,000IOPS、1.2TBモデルが290,000IOPSであり、こちらもSATA 3.0対応SSDの数倍以上のパフォーマンスである。

レイテンシは両モデルで変わらず、シーケンシャルリードは20μs、シーケンシャルライトは20μs、ランダムリードは120μs、ランダムライトは30μsと短い。耐久性を示す書き換え可能容量(TBW)は219TB、MTBFは120万時間、保証期間は5年間であり、こちらはSATA 3.0対応SSDのハイエンドモデルと同程度であり、信頼性も十分だ。

書き込み時の平均消費電力は、400GBモデルが12W、1.2TBモデルが22W、読み出し時の平均消費電力は、400GBモデルが9W、1.2TBモデルが10W、アイドル時の消費電力は、両モデルとも4Wである。

CrystalDiskMarkのシーケンシャルリード速度は1500MB/s超を記録

Intel SSD 750は、インターフェースとしてPCI Expressを採用し、NVMe 1.0もサポートしていることで高いパフォーマンスが期待できる。そこで、そのパフォーマンスを実際に計測してみた。テスト環境は、以下に示した通りだ。利用したIntel SSD 750は1.2TBモデルである。ベンチマークはIntel製のNVMeドライバを導入した状態で行った。

■今回のテスト環境
CPU Intel Core i7-3770K(3.50GHz)
マザーボード GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Express)
メモリ DDR3-1600 8GB(4GB×2)
グラフィックス AMD Radeon HD 5770
システムドライブ Western Digital WD10EADS(1TB)
OS Windows 8.1 Pro Update 64bit

Intel製のNVMeドライバのセットアッププログラム

デバイスマネージャーを開いたところ。ディスクドライブと記憶域コントローラーの項目に注目

まずは、定番の「CrystalDiskMark 3.0.3b」の結果から見ていこう。Intel SSD 750のシーケンシャルリード速度は1553MB/sであり、公称には及ばないものの、SATA 3.0対応ハイエンドSSDに比べても3倍程度の速度が出ている。シーケンシャルライト速度は1388MB/sと、こちらも非常に高速だ。

デバイスマネージャーを開いたところ。ディスクドライブと記憶域コントローラーの項目に注目