韓国サムスン・エレクトロニクスは18日、韓国・ソウルでSSD関連の発表会「2013 Samsung SSD Global Summit」を開催。業界初となるNVMe対応の超高速SSD「XS1715」を発表したほか、すでに出荷・搭載実績があるクライアントPC向けPCIe M.2 SSD「XP941」の展示とデモを行った。

NVMe(NVM Express)とは、Non Volatile Memory Expressの略で、不揮発性メモリのための次世代インタフェース規格のこと。フラッシュメモリを代表とする、不揮発性メモリの性能を引き出すためのコントローラ仕様を規定している。

現在は、コントローラとしてAHCIを利用しているが、AHCIはもともとHDDを前提に設計されたものだ。コマンドオーバーヘッドが大きく、フラッシュメモリの性能をフルに引き出すことはできない。そこでNVMeでは、マルチスレッド化を実現し、キューデプスの数を増やすなどして、性能の改善を図っている。NVMeの電気的なインタフェースにはPCI Expressが利用され、コネクタ仕様は「SFF-8639」と呼ばれる規格。

NVMe対応の超高速1.6TB SSD

業界初のNVMe対応超高速SSD「XS1715」。フォームファクターは2.5インチで、コネクタはSFF-8639規格に準拠する。容量は400GB / 800GB / 1.6TBの3モデルを用意

XS1715の特徴。エンタープライズ向け製品で、サーバーやストレージが主な用途となる。PCI Express Gen 3 x4を備えており、ホットスワップにも対応

新たに発表された「XS1715」は、このNVMeに業界で初めて対応したSSDであり、従来のハイエンドSSDに比べても、性能が格段に向上している。量産開始は2013年下半期の予定で、用途としてはエンタープライズサーバーやストレージを想定。容量は400GB / 800GB / 1.6TBの3モデルが用意されており、最上位となる1.6TBモデルのシーケンシャルリード速度は最大3,000MB/sにも達する。また、シーケンシャルライト速度も最大1,400MB/sと、かなり速い。

韓国サムスン・エレクトロニクスの現行製品、エンタープライズ向けハイエンドSSD「SM843」のシーケンシャルリード速度は最大520MB/s、シーケンシャルライト速度は最大420MB/sだ。XS1715では、シーケンシャルリード速度が約5.8倍、シーケンシャルライト速度が約3.3倍に向上したことになる。

さらに、SM843のランダムリード速度は70,000 IOPS、ランダムライト速度は11,000 IOPSなのに対し、XS1715のランダムリード速度は740,000 IOPS、ランダムライト速度は100,000 IOPSだ。それぞれ約10.5倍、約9.1倍と、大幅な向上を果たしている。NVMeは、エンタープライズ用途で重要になるランダムリード/ライト性能を高めることを重視した仕様だが、その効果は期待以上といえるだろう。

SATAとPCI Expressの速度比較。SATAの速度は600MB/sまで向上したが、PCI Expressは4GB/s(4レーン片方向の場合)まで高速化しており、その差は大きく広がっている。SATAの速度が、SSDにとってのボトルネックになっているのが現状

NVMeは、80の企業がコンソーシアムを作り、仕様の策定を行っている。Samsungはその中でも重要なプロモーター(全部で13社)の一員である。2011年5月に「NVM Express 1.0」、2012年10月には「NVM Express 1.1」が策定された

Samsungは、Ultrabook向けのPCI Express接続 M.2 SSDを、いち早くリリース。もちろんこれはまだNVMe仕様ではなく、PCI Express+AHCIということになる。それでもレイテンシは、SATAの12μsに対して約半分の7μsまで短縮化。PCI Express+NVMeなら、レイテンシは1μsまで短縮される

AHCIとNVMeのイメージ比較。AHCIが曲がりくねった道のイメージであるのに対し、NVMeはまっすぐで広い高速道路といったイメージである

NVMeと現行のAHCIとの比較。並列化やキューデプス数の増加などによって、性能を向上させている


クライアントPC向けM.2 SSD「XP941」の速さをVAIO Pro 13を使ってデモ

また、今回発表された新製品ではないが、今年6月に量産開始が発表されたばかりのPCI Express対応 M.2 SSD「XP941」の展示やデモが行われていたので、そちらの様子も紹介する。

今年6月に量産開始が発表されたばかりの、PCI Express対応 M.2 SSD「XP941」が展示されていた

XP941の発表時点のラインナップは128GB / 256GB / 512GBの3モデルだったが、1TBも登場するようだ

XP941のシーケンシャルリードは最大1,400MB/sに達し、50GBのデータもわずか36秒で転送できる。これは、HDDの7倍、SATA 3.0対応SSDの2.5倍の速度である

XP941は、Ultrabook向けとなるM.2準拠のSSDであり、VAIO Pro 13や新型MacBook Airなどに搭載されている。会場では、VAIO Pro 13を使って、PCI Express対応のXP941と従来のSATA 3.0対応SSDとの速度比較を行っていた。ベンチマークソフトにはCrystalDiskMarkが使われており、XP941のほうがシーケンシャルリードで約2倍、シーケンシャルライトで約3倍も高速という結果が出ていた。

さらに、XP941はACHI対応で、PCI ExpressもGen 2 x2であるが、2013年末から2014年初頭にかけて、PCI Express Gen 3 x4採用でNVMe対応(つまりインタフェース速度は上述のXS1715と同等)のM.2 SSDが登場する予定だという。単純にPCI Expressの帯域だけでも4倍になるので、こちらも大きな性能向上が期待できる。

VAIO Pro 13を使って、PCI Express対応「XP941」と従来のSATA 3.0対応SSDの速度比較デモが行われていた

左がPCI Express対応の「XP941」の結果で、右がSATA 3.0対応SSDの結果。CrystalDiskMarkではシーケンシャルリードが約2倍、シーケンシャルライトは約3倍も高速化されている

SamsungのSSD製品ロードマップ

PCクライアント向けの新製品として、今回「Samsung 840 EVO」と「PM851」(Samsung 840 EVOのOEM版)が発表された。PCI Express対応のM.2 SSDとしてXP941がリリースされており(VAIO Proなどに採用)、さらにその後継として、2013年末から2014年初頭にかけてPCI Express Gen 3×4採用のNVMe対応製品が登場予定。エンタープライズ向けとしては今回発表されたNVMe対応SSD「XS1715」のほかに、2014年前半にSAS 12Gb/s対応製品が登場予定だ。