日本の役割とは?

Appleは現在、世界中に研究開発拠点を設置する活動を進めている。横浜以外にも、イスラエル、イギリス・ケンブリッジ、上海でも研究開発拠点の開設に触れている。その中でも、横浜は大規模なものになることが予測される。

Appleのようなグローバル企業は、世界各国で売上をあげている。全体としては米国本社に計上されるが、国をまたいで資金をやりとりせず、その国の中で資金を活用することは税金対策にもなり、またオペレーションコストの削減にもつながる。例えば今回の研究開発拠点への活用も、その一例と言える。

同時に、各国の優秀な技術者の現地活用もまた、新製品開発にとって有用になる。それでは、日本にはどんな期待が寄せられているのだろうか。

イスラエル、イギリス、上海、横浜。これらの国や都市を見ると、それぞれの拠点に課せられた役割が何となく浮かび上がってくる。例えば、イスラエルはソフトウェアやアルゴリズムなど、イギリスはデザインや都市や社会科学、医学、上海は生産拠点とも近いことから、生産工学、といったところだろうか。

こうした中で、日本の拠点の役割はどのように位置づけられているのだろうか。 Appleのテクニカル・デベロップメント・センター設立にあたり、リクルートの転職情報「リクナビNEXT」には以下の職種が掲載された。

  • IC 評価エンジニア

  • Mixed-Signal IC テストエンジニア

  • IC検証エンジニア

  • Mixed-Signal IC プロダクトエンジニア

  • アナログ IC デザイナー

  • シニアCADエンジニア(フロントエンド)

現在募集されているのはいずれも、ICチップにまつわるものだ。もちろん、Appleの拠点で扱われる技術開発の一部に過ぎず、またICのデザインはどちらかというと、「やりたいことを回路の設計に落とし込む」部分ともいえる。

リクナビNEXTでの求人

ちなみに、Mixed-Signal IC(混合IC)というのは、アナログ信号・デジタル信号の両方を扱うICチップのことだ。例えばアンテナやセンサーなどから電気的な入力をデータに変換したり、それを処理する役割を持たせることもできる。

現在のスマートフォンやウェアラブルデバイスでは、端末自体がどんな入出力を持つかによって、「ハードウェアの進化」を左右する。その一方で、端末そのものを現在のサイズ、あるいはより薄いサイズに収める必要性もある。

日本の産業や世界のAppleの拠点との関係、募集要項などを含めて推測すると、Appleの研究開発における横浜の拠点の役割は、5Gなどの次世代通信、4K、8Kを見据えた映像処理と伝送、カメラ・イメージセンサー技術、ディスプレイ技術、複合センサー技術、あたりになるのではないだろうか。

また、日本の強みを考えると、メモリの集積技術、バッテリー、交通情報網整備や自動運転技術、金属や炭素繊維といった素材、これらの加工技術などにも期待することができる。