富士通は20日、同社製デスクトップPCの2,000万台出荷達成を記念し、福島県伊達市に位置する生産拠点、富士通アイソテックにて2,000万台記念PCの出荷式を行った。

2,000万台記念PCとして、ゴールドカラーで飾られた23型デスクトップPC「ESPRIMO WH」が展示された

1957年に設立された富士通アイソテックは、富士通の店頭向けデスクトップPC「ESPRIMO」やサーバPCの製造工場に加え、PC修理工場やドットインパクトプリンタ・サーマルプリンタの組み立て工場、精密加工センター、リサイクルセンターを備える。同社の店頭向けデスクトップPCは日本製のアピールとして、工場が所在する伊達市に由来する「伊達モデル」の名称で普及を図ってきた。

富士通アイソテックは、約80,000平方メートルの敷地面積の中に、デスクトップPC・サーバ組立工場。デスクトップPCやサーバPCの組立工場、インフラ工場、精密加工センター、プリンタ組立工場、PCの修理工場、リサイクルセンターなどを内包する。従業員数は2015年1月現在で約772人。デスクトップPCやサーバPCは年間100万台規模で生産する。写真はデスクトップPC組立ラインの様子

同社はデスクトップPCの1,000万台出荷を2004年に達成し、今回、2015年1月16日に2,000万台を達成した。店頭向けデスクトップPCの製造を開始したのは1994年。富士通アイソテックの岩渕敦代表取締役社長は、「1994年の製造開始から10年かけて2004年に1,000万台出荷を達成し、そこから10年で2,000万台の出荷となった。順調に進んだようにみえるが、実際にはいろいろな苦労があった」と語った。

富士通アイソテックの岩渕敦代表取締役社長

同社は1994年にデスクトップPCの生産を開始後、企業向けデスクトップPCの生産を1999年に、PCサーバの生産を2001年に開始。2003年からは生産効率を高める取り組み「生産革新運動」を導入し、PCの製造手番の削減や生産性の向上、棚残の削減などを経て、継続して生産台数の増加に取り組んできた。

2011年3月11日、「さあこれから、という時に、東日本大震災が発生した」(岩渕氏)。震度6弱の地震が工場を襲い、生産ラインや設備の崩落など、甚大な被害を受け工場機能が停止した。

しかし、災害時にそなえた事業継続計画(Business continuity planning)の発動で、12日後には、ノートPCの生産拠点である島根富士通に代替地製造を開始することができた。工場自体は約1カ月後となる38日後に復旧を完了する。

記念式典には、富士通アイソテックの岩渕代表取締役社長や富士通の齋藤邦彰執行役員常務ら富士通グループ関係者のほか、伊達市長の仁志田昇司氏ら地元関係者も来賓として招待された

岩渕代表取締役社長は式典で、「94年に開始したデスクトップPC生産事業は、今や大きな柱。大震災では甚大な被害を受けたが、富士通グループや地域の支援と協力で完全復旧できた。デスクトップPCの生産を開始してから、丸20年で2,000万台を達成でき、望外の喜びである。地域に根差した企業として3,000万台、4,000万台の達成に向け努力していく」と2,000万台までの取り組みを振り返った。

また、富士通ユビキタスプロダクトビジネスグループの齋藤邦彰執行役員常務は「2,000万台というのは大きな数字であり、達成は平坦な道のりではなかった」とコメント。「特に今は世界のPCの90%ほどが中国生産となっている。人件費は日本の10分の1で、これに対抗するため、我々は毎年10%ずつコストダウンを続けてきた。これからずっとMade in Japanで頑張っていく。2,000万台で終わる気はない。22世紀にいたるまで、3,000万台、4,000万台と製造していきたい」と力強く挨拶した。

富士通ユビキタスプロダクトビジネスグループの齋藤邦彰執行役員常務

富士通アイソテックの岩渕代表取締役社長

同社は今後、富士通生産方式「Fujitsu Production System」(FJPS)をより推進していく。

FJPSは、同社が6~7年前から行っている生産性効率化の取り組み。受注~物流配送までの生産軸では自立改善と平準化を進め、企画~生産までの開発軸では商品企画や開発に関わる「デジタル工房」、PC上での精密な解析シミュレーション「ものを作らないものづくり」、工場内の動きをシミュレーションする「デジタル生産」といったデジタル分析を製品開発工程の中に取り入れ、コンカレント開発によるコストダウンや品質の向上、生産スピードの高速化を図る。

「デジタル工房」では、商品企画や開発時に、3Dスキャナによるバーチャル化と3Dプリンタによる試作で、さまざまなアイデアを試すスピードアップに貢献。「ものを作らないものづくり」では、製品設計や試作評価、生産準備などの過程で、落下衝撃時の応力解析や電磁波ノイズの解析、基板ノイズの解析などをシミュレーションで行い、開発期間の短縮などを推進する。

「デジタル生産」では、「ものを作らないものづくり」から設計データや工程分析などのデータを受け取り、実際に工場で製品を製造した場合のラインやロボットの動きなどを、PC上の仮想工場で分析。得られたデータをリアルな工場へ反映し、量産立ち上げ時の品質向上を図る。

会場では、2,000万台出荷記念PCとして、富士通の液晶一体型デスクトップPC「ESPRIMO WH」のゴールドカラーが展示された。どの角度から見ても金色

2,000万台出荷記念PCに笑顔で寄り添う富士通の齋藤邦彰執行役員常務