世界最大級のコンシューマエレクトロニクス展示会として知られる、International CESのプレイベント「CES Unveiled」が、今週2月18日に日本の東京を舞台に開催される。『CES Unveiled Tokyo』と銘打たれたこのイベントの開幕を前に、CESの主催団体である全米家電協会(CEA)の会長兼CEOのゲーリー・シャピロ(Gary Shapiro)氏が、日本のテクノロジー産業に向けた期待のメッセージを表明した。技術力と忍者精神が、日本の成長の鍵だと指摘している。

CES Unveiled Tokyoの開催は明日2月18日

CES Unveiled Tokyoは、CESの公式Unveiledイベントであるとともに、今年の5月25日から中国・上海で開催予定の「International CES Asia」に先駆けて、年央の製品トレンドを知ることもできるCE(コンシューマエレクトロニクス)製品の展示会およにネットワーキングイベントとして企画されたもの。シャピロCEOは「イノベーションに向かう日本の新しい姿勢を祝う」ものとも位置づけている。

CEAでは日本経済について、近年は厳しい状況が続いていたものの、2015年になって立ち直りが見え、製造業の生産高が対前年比、前月比ともに上昇傾向にあるなど、ポジティブに分析しているという。シャピロCEOは、大手家電メーカーが、海外ではなく日本国内での生産を拡大する計画を打ち出していることからも、日本のテクノロジー産業が国の経済に再び火をつける力となってもまったく不思議ではないと付け加えている。

CEA会長兼CEOのゲーリー・シャピロ氏

シャピロCEOはCES Unveiled Tokyoの開催に向けたメッセージにおいて、上記の大手家電メーカーの復活だけではない、日本の再成長のもうひとつの源泉として、スタートアップ企業の新たな盛り上がりの兆候についても注目している。「忍者」の掟を知る起業家による「Ninja(忍者) Innovation」が成長の鍵だというユニークなものだ。

日本には起業家は多いものの、スタートアップ企業を成功させるという点で、これまであまり良い成果をあげてこられなかったといわれている。米ウォートン・スクールの研究によれば、日本は「企業の新規立ち上げ」の点において最下位ランクで、伝統的な組織構造や、明確な構想の欠如などが要因として挙げられている。一方で、近年の代表的なスタートアップの成功者であるGoogleやFacebook立ち上げを振り返ってみると、多くの場合に、これまでの主流の産業とは異なった柔軟性や戦略的思考が成功の要因となっていたとされる。

シャピロCEOは、「日本の忍者は戦士であり、忍者の精神は、伝統的な厳しい職業倫理に従いながらも、それを妨げることなくルール破りとイノベーションの掟を尊重する。戦士であった昔の忍者と同じように、ニンジャ・イノベータには柔軟な姿勢、戦略的思考がある。長年のスタートアップ企業不足の時期を抜けて、日本は10年前では考えられなかったような方法でイノベータの思考を取り込もうとし始めている」と、現状を打破する日本の起業家のマインドの変化に期待している。

シャピロCEOは、家本賢太郎氏が15歳の時にわずか9,000ドルの資本金でクララ・オンライン社を設立し日本と韓国でトップクラスのサーバ・ホスティング企業として育て上げた例や、でじまむワーカーズ社(ウェブデザイン)、サイバーダイン社(ロボット外骨格の製造)、Coiney社(携帯電話の決済アプリ)、Pluto社(スマホを使った家電製品の遠隔操作)などの起業エピソードに触れ、「柔軟な姿勢で、何か新しいことをし、失敗を受け入れ、そこから学ぶ、ニンジャの精神がまた日本に戻ってきた」と話している。

起業の環境にも好転の兆しがあり、スタートアップ企業の枯渇状態が何年も続いたことから、日本の政府も、「日本を世界で最もイノベーションにやさしい国にする」と約束するなどし、経済的な国家戦略特区の計画も具体的に進みだした。ちなみに、昨年2014年に新規上場を果たしたスタートアップ企業の数は80社で、これは2007年以来最大だったという。

2月18日のCES Unveiled Tokyoでは、日本の多くのニンジャ・イノベータらの参加が予定されている。開催概要はイベント公式Webページを参照のこと。

なおゲーリー・シャピロ氏は2013年の著書『Ninja Innovation: The Ten Killer Strategies of the World's Most Successful Businesses』(邦訳:『ニンジャ・イノベーション』中西真雄美訳、アルファポリス刊)でも、日本の古い忍者の掟がアントレプレナーの教科書になり得ると解説している。本書はニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストにも入った。