――パナソニックは、デジカメ事業において、4K動画にも力を注いでいますね。

杉田氏 カメラ分野でのブランド力や資産があるキヤノンやニコンと、パナソニックが同じ土俵で戦っていも勝ち目がありません。パナソニックは、カメラのなかでの転地、土俵替えをして、そこで新たな需要開拓をしていく。そのポイントが「通信」と「4K」ということになります。

DMC-CM1でも撮影した動画データから気に入った静止画を手軽に切り出せる

ミラーレス一眼カメラの「LUMIX DMC-GH4」では、初の4K動画機能を搭載しましたが、これが市場に受け入れられています。発売当初は計画比に対して250%の実績という滑り出しとなり、品薄を招き、お客様にはご迷惑をおかけしました。また、「LUMIX DMC-FZ1000」も同じような好調ぶりとなり、一時は品切れを起こしてしまった。現在も値崩れしないままで売れています。

では、4Kテレビがまだまだ普及していないのに、なぜ、4K動画機能を搭載したパナソニックのデジカメが高い評価を受けているのか。それは、4K動画から静止画を切り出すという新たなシューティングスタイルを実現したことに尽きます。連写だと1秒間に10枚が限界ですが、4Kフォトではその3倍、1秒間に30枚の4Kクオリティの静止画を撮影できます。つまり、動画を撮るのではなく、4K連写ができるカメラという打ち出し方をしたわけです。当初は心配でしたが、我々の予想以上に受け入れられたといえます。

たとえば、じっとしていないお孫さんを撮影するときに、静止画の撮影だと何枚撮ってもいいショットが撮れないということになる。しかし、4K動画で撮影して、一番いいところで止めると、LUMIXが「写真にしますか」と聞いてくる。「はい、チーズ」といって撮影するよりも、すごくいい表情が自然に撮れるというメリットもある。集合写真でも、子供の運動会でも同様です。

また、水の入った風船にダーツを投げて水がはじける瞬間を静止画で的確に撮影しようとすれば、何回失敗するかわかりません。鳥が羽ばたく瞬間というのは、1秒間の30枚だけでもまったく違う絵になるんです。そのなかから最適なものを選べる。このカメラには、シャッターは不要なんです。4K動画が新たなシューティングスタイルを実現したといえます。

DMC-GH4で撮影した4K動画データから静止画を切り出すと、こんな瞬間も写真にできる

――今後のパナソニックのデジカメ事業はどうなりますか。

杉田氏 デジタルカメラ市場が厳しいのは明らかです。しかし、「カメラ」としては厳しくても、「写真」としてみれば、逆にいい状況にある。かつてはわずか3,000万台の銀塩カメラ市場だったものが、デジタルカメラの登場により、1億2,000~3,000万台の市場となり、それに加えて、10億台のスマートフォンが使われている。

一日5億枚の写真がネットにアップされているという状況をみれば、写真文化はますます広がっているといえます。パナソニックは、全世界で10億人のスマホユーザーのうち、写真の価値にこだわり、スマホでは満足できないという、3~5%程度のユーザーを対象にビジネスをしていきます。そこには3,000~5,000万台の市場があるわけです。そのなかで、パナソニックは市場での存在感を発揮したいと考えています。