通話の共有は制限されるが、海外旅行では便利

使っていていくつかの制限とメリットがあったので紹介しておく。まずWi-Fi CallsをONにした際の制限は、iOS 8デバイス、OS X Yosemite間で可能な「通話の共有」機能が利用できなくなることだ。例えば、iPhoneにかかってきた電話をMacで受ける、MacやiPadからiPhoneの回線を使って電話をかける、といった新しい機能が使えなくなる。

そのため、筆者は、米国の自宅にいる際には、基本的にWi-Fi CallsをOFFにしておくことにした。

もう一つのメリットは、ケータイの電波が届いていないときにも、Wi-Fiさえ通っていれば通話ができるという点だ。これは米国内だけでなく、日本やその他の国に行ったときでも同様だ。

例えば日本に出張している際にWi-Fi CallsをONにしていれば、米国の電話番号にかかってきた電話を受けることができ、また米国の電話へ発信することができる。

海外でローミング通話をすると、国際電話料金が気になるところだが、Wi-Fi Callsであればこれらを気にする必要はない。しかも、T-Mobileは米国内での通話は無制限であるため、いくらでも通話し放題となるのだ。

もちろん、Wi-Fiが通っていると言うことは、iPhone同士であればFaceTime/FaceTime AudioやLINE、Facebook Messenger、Google Hangoutsなどの無料音声・ビデオ通話をアプリから楽しむことができる。

しかし、どうしても一般回線に電話をかける必要がある機会も少なくないはずだ。また緊急発信をこれらのサービスで行うことはできない。なにより、端末ネイティブの通話機能を利用できる点で、快適だ。

日本の携帯電話会社もWi-Fi Callsへの対応を行うことができると、VoLTE以上にメリットが大きくなるのではないか、と期待している。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura