メーカーとしての自負と挑戦

高級時計の多くが保証期間を1年としているのに対し、OCEANUSは最初から3年のメーカーの保証期間が付けられている。これはカシオのモノ作りに対する自負と挑戦だと福士氏は語る。

福士氏「これまでお話ししたように、OCEANUSは品質向上への徹底したこだわりのもとに製造しています。だから、カシオとしても自信を持って3年の保証をさせていただこうと。それに、先々高級ブランドとしてどこまでやっていけるかという挑戦でもあります。長年ご安心して使っていただくために、健康診断的な点検はおすすめしたいですね」

機械式時計ではオーバーホールなどというが、OCEANUSの場合それとは少々異なるという。

性能点検や消耗品の交換、外観の清浄などをフルセットで行う高額商品専用サービス『あんしん点検パック』。料金は25,000円(税別)

福士氏「機械式時計は定期的に調整をしてあげないと、精度が維持できません。でも、私たちが製造しているクォーツ時計は、それほどの精度低下は起こりません。OCEANUSのように電波ソーラー、あるいはOCW-G1000のようにGPSで時刻情報を取得するモデルに至っては、時計としての精度は長年維持できます。したがって、オーバーホールというより製品の総合点検、といったニュアンスですね。

ムーブメントの特性やソーラーセルの発電量、2次電池の性能などを検査して、消耗品の交換や外観の清浄などをフルセットで行う高額商品専用のサービス『あんしん点検パック』を今年4月から始めました。一般的な時計は壊れてから持ち込まれることが多いのですが、OCEANUSのような商品では、こういったサービスを定期的に利用していただければと思います」

高級ブランド「OCEANUS」を根付かせるために

「OCEANUSは一生もの」と福士氏はいう。その言葉通りの製造やサービスが用意されているのは、十分ご理解いただけたことだろう。だが、保証書にはOCEANUSのパーツ保持期間は10年と記載されている(一般モデルは7年)。かつての通産省が通達(法律ではない)したものでは、ウオッチのメーカーパーツ保持期間は一般品が7年、高額品が10年だが、それでは一生ものの時計にはなり得ない。

福士氏「それは大きな課題です。実は内規的にパーツ保持期間を10年より延ばそうと活動しています。そうしないと、高級ブランドは根付かないでしょう。

OCEANUSの歴史自体がまだ10年ですから現在は問題ありませんが、今後はよりしっかりとした対策が必要だと考えています。外注パーツを規格化して廃番(パーツが製造されなくなり、カタログから消えること)対策を行うことなども検討を続けています」

一般に、腕時計は発売から年月が経過するほど修理依頼数が下がっていく。しかし、2007年に発売されスマッシュヒットとなった「OCW-S1000」は、今でも修理やメンテナンスに持ち込まれる数が下がらないという。

福士氏「それだけ愛着を持って使っていただいているということですよね。OCEANUSは、コマ詰め(バンドのサイズ調整)依頼でサービスセンターに持ち込まれる数が非常に多いんです。普通に購入された方は店頭でコマ詰めされるでしょうから、サービスセンターに依頼される方は、OCEANUSをプレゼントされた方も多いのだと思います。実際、百貨店さんでも、結納返しや就職祝いに贈られる方が多いと聞きます」

OCEANUSは高機能と美しいデザインだけでなく、ユーザーの思い入れや愛着、そして人生の付加価値をもその身にまとって使われる時計なのだ。それが福士氏のいう「一生ものの時計としての価値」なのだろう。そのために、カシオも全力で品質保証体制を整えている。

福士氏のお話を伺ううち、何としても山形カシオでOCEANUSの組み立て現場をこの目で確かめてみたくなった。そこで、次回はいざ山形へ! PPLラインの現場を詳しくレポートする予定だ。お楽しみに!