また、カテゴリーにはクローバーのアイコンがあり、日常生活の中で楽しかった思い出などに使用することを想定している。クローバーアイコンだけを絞り込めば、タイムラインが今月の楽しかった思い出のシーンで溢れるのだ。レジカメは買い物に使うだけでなく、毎日のライフログとしても十分に活用できる。

三崎氏 「実は、もらったプレゼントや入場無料の観光地など、金額を0円で入力したものも絞り込めます。いわゆる"プライスレス"な思い出ですね。」

写真のアスペクトは正方形。現状は1種類ではあるが撮影すると自動でフィルター効果が適用され、お洒落な写真が残せるなど、冒頭にも話の出たインスタグラムを想起させる。

三崎氏 「アプリが使われるシーンから、インスタグラムを意識はしています。でも、正方形なのは画面レイアウトの都合という理由が大きい。画面下部に電卓ボタンやコメントを表示しなければならないので、画像を大きく表示しようとすると必然的に正方形になるんです」

フィルター効果は、使われるシーンを想定して、食べ物が美味しそうに見えるようパラメーターを調整したという。主に彩度とコントラストを上げているが、その調整はコンマいくつというレベルで追い込んでいるとか。

三崎 「ドーナツを買ってきて、これが一番美味しく見えるように調整してくれと開発にお願いしたりしましたね(笑)」

記録した画像はTwitterとFacebookで共有が可能なので、買い物の報告や自慢、頼まれたお土産の確認もできる。Twitterで共有する場合、つぶやきに自動的にハッシュタグ(#レジカメ #regicame)が追加されるので、他のユーザーのレジカメ画像を手軽に探すことができる。買い物上手やセンスの良いユーザー、海外雑貨が好きなユーザーなどをフォローすると、自分の買い物やお土産探しにも役立つはずだ。現在はプライバシーを考慮して場所情報は共有されないが、今後はユーザーからの希望次第で対応を検討するとのこと。また、LINEなど他のSNSへの対応も視野に入れていきたいと花房氏は語る。なお、レジカメ専用のSNSを開設する予定は今のところないという。

このように、実に楽しそうなレジカメ。現在はOS7.1以上のiPhone用のみ公開されているが、カシオではOS8でも検証を続けているという。デザインセンタープロダクトデザイン部の花房紀人氏は語る。

花房氏 「日本国内でのユーザー数の多さ、そして開発環境が整っていることから、まずはiPhoneアプリとしてリリースしました。将来は海外展開も見据え、Android用のリリースもおこなっていきたいですね。」

カシオ計算機デザインセンタープロダクトデザイン部 花房紀人氏

花房氏によれば、ターゲットユーザーは当初、女性を想定していた。が、多くの人々の意見を聞くうちに、男性からも非常に興味を持ってもらえていると感じたという。考えてみれば、家計簿を付けるのが苦手なのはむしろ男性だ。そして、男性のSNSユーザーも数多くいる。こんなアプリが無料なら、老若男女を問わず使わない手はない。

企業イメージをアプリが変える

しかし、ここまで凝ったアプリを無料で提供するとは驚きだ。カシオは一体、これをどうビジネスに繋げる考えなのだろうか。

花房氏 「レジカメで直接お金を稼ごうとは、あまり考えていません。カシオという会社にユーザーが感じているであろう堅いイメージを、こういうアプリで変えてみたいんです。なんといっても社名に"計算機"ですから(笑)。これはこれで、会社の起源と業務を物語る良い名前ではあるんですが、我々がユニークな発想と柔軟な姿勢で物づくりに取り組んでいることを、もっと多くの人々に知ってほしい。そんな方々が将来的に増えてくれれば、カシオという会社も世の中もさらに面白く変化していくんじゃないか、という期待があります」

レジカメは元々、デザインセンターの提案活動から生まれた。ご存じの通り、カシオはG-SHOCKをはじめとする時計やデジカメのEXILIM、電子辞書のEX-WORDや電子楽器のPriviaなどなど、多岐にわたる製品作りを行っている。そして、これら数多くの事業部と製品に、串刺し的に関わっているのがデザインセンターなのだ。

花房氏 「その立ち位置から、私たちは社内でも各事業部の強みを客観的に見られる部署でもあるんです。そこで半期に一度、自由な提案をする機会があるんです。レジカメは、そこで三崎が提案したプロダクトです。最近では、スタンプメーカーのポムリエなどもここから誕生した製品ですね」

今までは、「物としての製品」を前提に考えてきたデザインセンタースタッフだったが、その心の内には、それがアプリやWebサービスでもいいのではないかという思いが常日頃からあったという。アプリは、プロダクトの開発に比べて予算とスケジュールを抑えることができ、開発のハードルが低い。そこで思い切って提案したところ、レジカメは無事、上層部のゴーサインを得てスピーディに開発が進められた。

花房氏 「"物としての形"にならない資産とでもいいますか。最初はカシオのアプリと気付かず使っていただいてもいいかな、くらいに実は考えているんですよ。アイディアや使いやすさが気に入って使っていたら、ある日、あれ? カシオって書いてある、と気付く。そのとき、カシオってこんな面白い物も作るんだなぁと思っていただければいいんです。次にデジカメを買うときにEXILIMを選んでいただければ、もっといいなぁと(笑)」

お話を伺っている間、我々取材陣からも「カテゴリーごとに値段順でソートできるようにしてはどうか」、「高額な買い物にランキングマークを付けては? 」など、こんな機能が欲しい、こう使ったら面白そうといった雑談が途切れなかった(おかげで、原稿をまとめるのに苦労している)。

花房氏 「今回いただいたような意見も、できるだけ迅速に形にしていきたいですね。そういった価値もレジカメの価値になり、ひいてはカシオの企業的価値になっていくと思うのです」