カシオ計算機とKADOKAWAが共同で設立した音楽レーベル「Mono Creation(モノ クリエイション)」の具体的な活動概要がようやくリリースされた。詳しくは別記事に譲るが、カシオから発表された活動内容としては主に以下の3つ。アルバム「Colors of Life by Mono Creation」の発売、公式Webサイト「Mono Creation Web」の開設、そしてレーベルコンセプト「一体十色」を表現したプロモーション・ビデオの公開だ。しかし、これだけでは今ひとつピンと来ないと感じた方も多いはず。そこで、双方の担当者に話を伺った。

「異色の取り合わせ」その誕生のきっかけは!?

カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション統轄部 室長 金山正徳氏

カシオとKADOKAWAという異色のコラボ、しかも音楽レーベルの設立という意外性に驚かれている読者諸氏も多いだろう。そこでまず、共同で音楽レーベル「Mono Creation」を設立することになったきっかけについて伺った。カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション統轄部の金山氏は語る。

金山氏 「楽器の販促を考える上で、従来のような直接的なアプローチではなく、もっと何か新しいことができないかと考えていました。その中で、すでに楽器を弾ける人々、すなわち直接的なマーケットだけでなく、もっと多くの人々に音楽の魅力を伝えて、楽器を弾くことに興味を持ってもらわなければいけないだろう、と考えたのです」

それはちょうど、G-SHOCKの魅力を伝えるカンファレンスとアーティストを招いたパーティなどで構成されるカルチャーイベント「SHOCK THE WORLD」などを通じて行っているファン作りマーケティングに近い発想だったという。ちょっと大袈裟ですが、と前置きして次のように続ける。

金山氏 「音楽文化への貢献といいますか。そこで、以前から接点のあったKADOKAWAさんにお話をさせていただきました」

KADOKAWA 音楽企画制作局 局次長 河越啓子さん

これに対し、KADOKAWAも興味を抱いたという。KADOKAWA 音楽企画制作局の河越さんは語る。

河越さん 「カシオさんには楽器があり、私たちには音楽や映画の制作・出版ノウハウがあります。音楽という共通のキーワードがありながら、今まで不思議と協業の機会がありませんでしたが、コンテンツメーカーである私たちがハードメーカーであるカシオさんと組むことで何らかの化学変化が起こるのではないかと考えました」

KADOKAWAは、シリーズ累計セールス30万枚のモンスター・コンピレーションCD「IN A YELLOW TONE」を有する音楽レーベル「GOON TRAX」などを持つ。Mono Creationではこれらのレーベルとは異なる音楽の創出やユーザーへのアプローチを期待している。

河越さん 「たとえば、12月先行配信、来年1月にCD版をリリースするレーベル初のアルバム"Colors of Life by Mono Creation"は、GOON TRAXのカタログから厳選した楽曲をPriviaの美しいピアノ音色で表現しています。今回はジャズやヒップホップをメインに選んでいますが、ヒップホップの持つダークなイメージがガラリと変わって、聴きやすくて気持ちのいい、すごく新鮮なサウンドに仕上がっています。それだけで、ヒップホップの間口がぐんと広がるんですよね。これは、私たちにとっても非常に魅力的です」

シリーズ累計セールス30万枚のモンスター・コンピレーションCD「IN A YELLOW TONE」

ライフスタイルに音楽が自然に溶け込む環境を

カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション統轄部 プロデューサー 梶浦正則氏

「Colors of Life by Mono Creation」は、「Mono Creation」所属のアーティストが楽曲のアレンジを担当。音楽制作、演奏の現場ではすべてPriviaが使われた。アーティストたちには、その使いやすさと音色の美しさが大変好評だったとのことだ。カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション統轄部の梶浦氏は説明する。

梶浦氏 「今回のアルバムでは"Privia PX-5S"という機種を使用しています。ピアノをはじめ各楽器の音が非常にキレイで、まさにレーベルコンセプトの"一体十色"を体現するような楽器です。MIDI付きなのでDTMにも使用できるなど汎用性が高く、軽量で持ち運びしやすいのでライブ会場などでの使用にも向いています」

しかし、それを前面に押し出していくつもりはないと言う。

梶浦氏 「Mono Creation所属のアーティストは、収録でもライブでも必ずカシオの楽器を使います。ですが、それをクレジットしたりアピールしたりするつもりはありません。大きな目的は、あくまで多くの人に多くの音楽を届けて、その楽しみ方の裾野を広げること。聴く人にとってカシオの楽器がどうこうより、楽曲としての完成度や演奏の感動が大事ですよね。いい曲だなぁ、キレイな音色だなぁと思ってくれたその向こうに、カシオの楽器が見えてくれたらいいな、という考え方です」

KADOKAWA 音楽企画制作局の寿福氏も次のように述べる。

KADOKAWA 音楽企画制作局 A6Rプロデューサー 寿福知之氏

寿福氏 「このあたりのユーザー的価値観と企業的価値観の間を埋めていくのが、私たちの役割だと思っています。さまざまな音楽がユーザーのライフスタイルに自然に溶け込んでいくフィールドを作ること。そして、そこにカシオの楽器が自然にある。そんな環境を、私たちの音楽作りのノウハウを生かして作って行けたらと考えています」

また寿福氏は次のように続ける。

「私たちは楽曲の原盤制作を行っている立場でもあるので、その活用の場をより広げていきたいという考えもあります。より多くの人々が音楽に触れてくれるための環境作りは、当社としても積極的に行っていきたいですね」

KADOKAWAといえば、中高年の読者の方々には、かつて一世を風靡したスクリーンミュージックのイメージも鮮烈に残っているに違いない。もしかすると、あの名曲の数々が形を変えて我々の耳に届く、そんな可能性もないとはいえない。

左からカシオ コミュニケーション統轄部 広報宣伝部 三浦氏、金山氏、梶浦氏、KADOKAWA 寿福氏、河越さん

なお「Colors of Life by Mono Creation」はコンピレーション・アルバムというスタイルとなるが、今後は所属アーティストのオリジナルタイトルもリリースを予定しているとのこと。また、ライブイベントなども計画されているらしいので、情報が入り次第お届けしたい。ともかくも、それぞれ独自のスタンスで音楽に関わり続けてきた歴史を持つ両社の強力なタッグが、我々に何を見せ、聴かせてくれるのか。新たなメッセージとサウンドを、耳をかっぽじって待とうではないか。