パフォーマンスの差は「I/O」にある?

まずは定性的な評価からはじめよう。iOS 8.1.1にアップデートしたiPhone 4Sだが、結論からいうと確かに速くなったように感じられる。ホーム画面のフリックや通知センターの表示、ロックの解除やAppスイッチャーの操作などあらゆる場面で感じていた"引っかかり"は、確実に減っている。アプリを新たに起動した場合、表示し終えるまで若干待たされる傾向は残るが、iOS 8.0のときほどのストレスではない。iOS 8.1で多少キビキビとした操作性が、さらに一歩改善されたという印象だ。

しかし、最初に試したベンチマークアプリ「Geekbench 3」では、iOS 8.1とiOS 8.1.1の差はほとんど検出されなかった(表1)。Geekbenchは演算性能の測定に特化しているため、演算にかかわるライブラリ/フレームワークに変更はないことがうかがえる。

一方の「PerformanceTest Mobile」は、メモリとディスク、2D描画の項目で大幅なパフォーマンスの改善を確認できた(表2)。詳細は不明だが、UI全般がパフォーマンスアップしていることが錯覚でないとすれば、iOS 8.1.1においてUIKitやCoreImageといった2D描画に関係するライブラリに変更が加えられた可能性がある。

さらに、約20%スピードアップしたディスクへの書き込みもさることながら、わずか3%とはいえメモリへの書き込みも改善されていることから、基礎的なI/Oを担うライブラリの最適化が進んだとも考えられそうだ。ただし、今回のベンチマーク測定はiPhone 6など64ビット環境では測定していないため、最適化のメリットはApple A5(32bitバイナリ)に留まる可能性がある。

ともあれ、iOS 8.1.1にアップデートすることでiPhone 4Sの体感速度が多少なりとも改善されることは確か。まだ様子見を決め込んでいるユーザは、そろそろアップデートを決断してもよさそうだ。

今回利用したベンチマークアプリ「PerformanceTest Mobile」。演算性能だけでなくディスクI/Oや描画性能についても検証できる

PerformanceTest Mobileで大きな差がついた「Image Rendering」テスト

■表1:Geekbench 3の結果

iOS 8.1 iOS 8.1.1
Integer Single-Core 281 278
Multi-Core 554 555
Floating Point Single-Core 181 183
Multi-Core 364 366
Memory Single-Core 152 154
Multi-Core 214 211
TOTAL Single-Core 215 215
Multi-Core 410 410

■表2:PerformanceTest Mobileの結果

iOS 8.1 iOS 8.1.1
System 1417 1503
CPU 9771 9790
Disk 3875 4302
Write 17.6MB/秒 21.3MB/秒
Read 39.3MB/秒 40.8MB/秒
Memory 1597 1643
Write 277MB/秒 286MB/秒
Read 267MB/秒 266MB/秒
2D 367 401
Solid Vectors 509 Vectors/秒 484 Vectors/秒
Transparent Vectors 447 Vectors/秒 460 Vectors/秒
Complex Vectors 56.3 Complex Vectors/秒 86.7 Complex Vectors/秒
Image Rendering 492 Images/秒 419 Images/秒
Image Filters 14.6 Filters/秒 14.5 Filters/秒
3D 1209 1207